2016年2月号掲載
フォーカス
Original Title :FOCUS:The Hidden Driver of Excellence
- 著者
- 出版社
- 発行日2015年11月25日
- 定価1,870円
- ページ数367ページ
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著者紹介
概要
全世界500万部のベストセラー、『EQ こころの知能指数』の著者ダニエル・ゴールマンの最新作である。テーマは「注意力」。ビジネスをはじめ、人生で成功を収められるかどうかは、この能力にかかっているという。本書では、多くの事例を引きつつ、注意力とはどのようなものかを明らかにし、いかにして鍛えればよいかを示す。
要約
「注意」を解剖する
最近の研究により、どんな課題を遂行する上でも、「注意力」が決め手となることがわかってきた。注意力が妨げられるとパフォーマンスが落ち、注意力が向上すると上がる。人生をうまく生きられるかどうかが、この能力にかかっているのだ。
注意力は、無数の知的活動に内在している。基本的なものだけでも、理解、記憶、学習、自己の感情を分析する能力、他者の感情を読む能力、対人関係を円滑にこなす能力、などがある。
情報過多が、注意力を奪う
注意力は人生に多大な影響を及ぼす。しかし、あまり認識されておらず、重視もされていない。
週末、保養地へ向かう乗り合いバンでのこと。バンには9人の女性グループが乗っていたが、皆iPhoneやタブレットをいじり、ほぼ無言だった。
この9人の沈黙は、テクノロジーが人間の注意を奪って人間関係を断ち切ってしまう現実を如実に示している。デジタル機器に夢中になれば、生身の人間と交流する時間が犠牲になる。
次々に殺到するデータに追いたてられると、内容を考える時間がなくなり、人々は手抜きに走る。電子メールの重要性をタイトルだけで判断したり、メッセージやメモを走り読みしたり…。
こうしたことは、1977年の時点で、ノーベル経済学賞を受賞したハーバート・サイモンが予見していた。情報過多の時代について、彼は言う。「(情報が消費するのは)受け手の注意力である。従って、情報が豊富になれば、注意力の貧困を招く」。
選択的注意の能力が高いほど集中できる
私はかつて《タイムズ》紙の科学部で、多くの記者と編集者と机を並べて仕事をしていた。
すぐそばで、いつも3、4人が話し、電話取材中の話し声が耳に飛びこんでくる。仕事場が静かな時などまずなかった。それでも「集中したいんだ、静かにしてくれ!」と叫ぶことなく、皆、騒音をシャットアウトし、集中しようと努めていた。
そうした騒音の中での集中は、「選択的注意」、すなわち次々に襲ってくる刺激を無視して1つの目標だけに神経を傾注する能力である。
集中を乱す要因は、「感覚的なもの」と「情動的なもの」に大別される。