2016年3月号掲載
アンドロイドは人間になれるか
- 著者
- 出版社
- 発行日2015年12月20日
- 定価803円
- ページ数223ページ
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著者紹介
概要
姿や動き、声が人間そっくりの美人アンドロイドが登場するなど、近年、ロボットの進化が目覚ましい。人と見まがうばかりの彼・彼女らの存在は、私たちに次の問いを突き付ける。「ロボットと人間の境界とは何か」「人間とは何か」。哲学的ともいえるこの問題を、世界的ロボット工学者が、開発したロボットを紹介しつつ考える。
要約
ロボットと“心”
僕は、人間らしいロボットの開発を目指している。そして、いつか人間を作れると思っている。
誰もが「このロボットは心を持っている」と思うロボットが実現できれば、それは人間と一緒だ。
本書では、僕が開発してきたロボットを紹介しながら、「人間とは何か」を考えてみたい ―― 。
不気味なのに愛されるロボット
僕が作ったロボットで、最も「気持ち悪い」と言われるのは「テレノイド」(下写真)だ。これは、人間として必要最小限の「見かけ」と「動き」の要素のみを備えた通話用のロボットである。
動くのは、主に目と首と手のみ。小型のボディに、肌ざわりのいい外装。これを抱えながら互いに通信し合うと、遠隔地で操作している知人が、すぐそばにいるような存在感を得られるのだ。
ほとんどの人は、テレノイドを使う前に「気持ち悪い」と言う。しかし、複数の施設で実験したところ、高齢者はテレノイドでの通信を好み、「生身の人間以上(実の家族以上)に親しみやすい」と評価した。大抵の人は通話を始めると、夢中になって話す。これは日本だけでなく、オーストリアやデンマークなど、様々な施設で行った調査から明らかになっている。
老人たちは、なぜ自分の息子たちとの対面でのコミュニケーションより、「テレノイド相手に息子と話す方がいい」と言うのか。
テレノイドを通じての対話なら、家族が内心抱いている「親の世話をするのは面倒くさい」という雰囲気や、不安が表情に出ることもなく、それが親に伝わることもない。だから高齢者は「テレノイドと話す方が快適だ」と言うのである。