2016年4月号掲載
トリガー 自分を変えるコーチングの極意
Original Title :Triggers:Creating Behavior That Lasts ―― Becoming the Person You Want to Be
著者紹介
概要
悪い習慣を改めるのは難しい。悪弊を直し、なりたい自分になれないのは、意志の力が弱いから? いや、私たちを取り巻く環境がトリガー(引き金)となって邪魔をするからだ。こう語るエグゼクティブ・コーチングの第一人者が、人の行動を決定づけるトリガーの正体を解明、味方につけて行動を改善するための方法を明かす。
要約
なぜ、行動改善は難しいのか
エグゼクティブ・コーチとして私は、リーダーの行動習慣の改善のお手伝いをしてきた。
たいていは、行動を改善すれば、もっと優れたリーダーになれる。が、改善するのは難しい。
自分の行動を変えれば報われるのに、ノーリスクであっても、私たちは変わることに抵抗する。例えば癌になる恐れがあるのに、喫煙者の3分の2はやめたいと言いつつ、やめようとしない。
行動を改め、それを維持することが難しいのは、この世界が、私たちを軌道から外すような様々な「トリガー」(引き金)に満ちているからだ。
「環境」が私たちをコントロールしている
私たちは、「環境」が私たちの行動を決めていることに気づかないまま人生を送っている。
渋滞した高速道路で、イライラしてキレることがある。それは、乱暴なドライバーに囲まれた状態がトリガーとなり、私たちの行動を一時的に変えてしまうからだ。
人は環境の容赦なき力の犠牲になることがある。
30年前、出張漬けで生活の半分を飛行機の中で過ごす生活を始めた時、機内は読書や原稿を書くのに理想的な環境だった。電話もテレビもなく、何の邪魔も入らない。すごく生産的になれた。
だが機内サービスが改善され、前方のスクリーンに1つの映画を上映するやり方から、50ものオンデマンド・チャネルから選べるようになり、生産性は低下した。誘惑にさらされ、くだらない映画を2つも3つも続けて見るようになった。飛行機から降りると、次の仕事に向けて気合を入れるのではなく、機内で浪費した時間を考えて自分を責めるようになった。環境の変化に応じて私も変わったが、よい方向に変わったわけではなかった。
私たちは環境とうまくやっていると思っているが、実は戦っている。環境をコントロールしているつもりだが、実際には環境が私たちをコントロールしているのだ。
トリガーはどう働くか
環境は常に行動のトリガーになる。私たちが環境を作り、コントロールしないと、環境が私たちを作り出し、コントロールする。その結果、自分で自分だと思えないような人物に変わってしまう。