2016年4月号掲載

若き友への人生論

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著者紹介

概要

“国民教育の師父”と謳われた森信三師による、「人生論講話」である。いわゆる哲学的な人生論ではなく、誰にもわかりやすい形で、人生を通観したもの。充実した1日が充実した人生をもたらす、不幸を回避せず耐え抜くことで大きな幸福が与えられる…。二度とない人生を意義あるものとするための知恵の数々が語られる。

要約

人生の意義

 人生についての考察を始めるにあたり、最初に最も重要な根本問題として考えられるのは、そもそも人類がこの地球上に出現したこと自体が地上最大の驚異であり、まさに「奇蹟」だということへの認識であろう。

 そのはじめ渾沌とした超高温度の星雲状態の地球が冷却して、やがて巨大なる球体を形成し、荒漠たる地表の上に、単細胞的形態の生命が出現するまでに要した時間を考えるだけでも、そこには如何に遙遠なる時の経過が必要だったであろうか。

 いわんや、生物進化の果てにおいて、人類が出現したということは、これを深思する時、それは1つの絶大なる驚異というべきであろう。

 だが、そのような奇蹟として出現した人類の「生」が、いかに果ない短生涯かということは、まさに第二の不可思議事といってよいだろう。

 人類が発生して以来の年数を数えても、すでに50万年前後は経過したというのに、人間の生命はせいぜい100年までといってよい。しかもそれは、二度と繰り返し得ないものである。

 されば我々にとって確実な真理は、この我々の地上的生が、二度と繰り返し得ないことを確認しつつ、この80、90年に過ぎない生を、いかに意義あるように、充実して生きるかということである。これはいかなる人間にとっても異議のない、至上の真理といってよいであろう。

天賦の特質を発揮する

 では、このように二度と繰り返し得ない人生のもつ意義とは何か。

 第一は、この地上に「生」を与えられた以上、我々は、「天」から賦与せられた特質をできるだけ発揮し、実現しなければならぬことであろう。

 我々は、自己の実現すべき使命が如何なるものであるかは容易に予知し難い。だがそれにも拘らず、真摯にこれを求めて止まぬとしたら、神は次第にそれを啓示し給うといえるであろう。

 そのような啓示は、多くの場合「好き」なことは「得手」とか「得意」という形態によって示されるようである。即ち、自他共に認めるその人の長所として発現するといってよい。

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