2016年5月号掲載
バリアバリュー 障害を価値に変える
著者紹介
概要
「バリアバリュー」とは、弱点や短所などを含む広い意味での障害を、価値に変えること。障害は、必ずしも克服すべきものではない。見方を変えれば、「強み」にもなる。骨形成不全症のため、今までに骨折を20回、手術すること十数回。車いすに乗るベンチャー起業家が、自身の半生と、バリアをバリューに変える思考法を語る。
要約
バリアがバリューに変わるまで
本書では、「バリアバリュー」という思考法をお伝えしたい。バリアとは、狭義では「障害」のことだが、ここではもっと広く捉えて「弱点」「短所」「苦手なこと」だと思ってほしい。
そして、「バリアフリー」(障害を取り除く)ではなく、「バリアバリュー」(障害を価値に変える)というところがポイントである。
バリアバリューとは、「短所を長所に変えよう」という考え方だ。とはいえ、いきなり「短所を長所に変えましょう!」と言われても、多くの人は戸惑うだろう。そこで、まずは私の人生を振り返りながら、この思考法の生い立ちを紹介したい。
自分のバリアに気づく
1989年4月14日、私は愛知県安城市で、普通の赤ちゃん同様、元気な産声をあげた。ただ、私はある魔法をかけられて生まれてきた。
「骨形成不全症」、2万人に1人の割合で発症する病気だ。人の骨は本来、カルシウムと「I型コラーゲン」というタンパク質の組み合わせで丈夫にできている。だが私の骨には、I型コラーゲンがない。つまりこの魔法は、骨を脆くするのだ。
幼稚園の頃、私はまだ歩けた。それでも走って転んでは骨折し、よく病院に担ぎ込まれた。小学校に入ってからも骨折を繰り返し、5年生になる頃には車いすで生活せざるを得なくなった。
高校生の頃、歩けるようになりたいと思い、足を手術する。だが、歩けない。そして17歳の冬。私は「自分の足で歩く」という夢を諦めた。
もう自分の足では歩けない。では、そんな自分を好きになるには、どうしたらいいのだろう?
事業を起こして大儲けしたら、自分をカッコいいと思えるようになるかもしれない、と考えた。
だが、起業家になるといっても、何の知識も経験もない。さすがに、今すぐ起業をするのは無理だと思い、大学へ行くことにした。そこで経営を学び、起業する仲間を探そうと考えたのだ。
バリアからバリューへ
大学入学後、後に一緒に起業することになる民野剛郎と出会った。彼には、起業を目指す強い想いがあった。そのうち、私たちはお互いを起業する際のパートナーとして認めるようになった。