2016年8月号掲載
米軍式 人を動かすマネジメント 「先の見えない戦い」を勝ち抜くD-OODA経営
著者紹介
概要
日本企業は、計画から始まる「PDCA」を好む。だが先の見えない今日、有効なのは、相手を観察することからスタートする、米軍生まれの意思決定プロセス「OODA」だという。「観察(Observe)・方向付け(Orient)・決心(Decide)・実行(Act)」。紹介される、この流れを繰り返すことで、人や組織は臨機応変に戦えるようになる!
要約
「計画による管理」の功罪
近年、日本の会社では「計画による管理」を強めている。そこではトップが「計画」を作り、それを現場が実行したかどうか「管理」する。
このような計画による管理は今や経営の常識で、誰もが納得している。だが、計画による管理は、一歩間違うと悲劇的な結果を招く。
敗北したイラク軍と東芝事件の共通点
例えば、1990年に起きた湾岸戦争では、イラク軍は優秀な兵士と高性能の兵器を持ちながら、米軍を中心とした多国籍軍にあっけなく敗れた。この戦争において、イラク軍には「計画と管理」をめぐる2つの敗因があった。
①計画通りに進まなかった
当初、イラク軍はクウェートが攻撃対象になると読んで作戦計画を作った。しかし、その読みは外れ、多国籍軍はイラク領内を直接攻撃した。当初の計画が間違っていた場合、それを直ちに修正できる柔軟さと臨機応変さがなければならないが、イラク軍は柔軟な修正ができなかった。
②兵士が自主的に動けなかった
開戦当初、通信システムなどを破壊されたイラク軍は、自軍の間の交信さえも困難な状況に陥り、出撃命令を待っていた兵士たちが出撃できない例もあった。上官の命令に絶対服従のイラク兵士たちは、自主的に動くのが苦手だった。
イラク軍に見られる2つの敗因は、昨今の日本企業にも当てはまるように思う。
例えば、2015年に起こった東芝不正会計事件。この事件では無理な計画を達成したいトップの指示のもと、善意の社員たちが粉飾に巻き込まれた。
これまで粉飾といえば、一部の当事者が悪意をもって数字をいじるのが一般的だった。しかし、東芝の不正会計はそうではない。上から指示された担当者が、それに逆らえず不正に荷担した。
東芝の「ノーと言えなかった」社員たちに、イラク兵士と同じ構図が見える。
新時代にふさわしい計画と管理の運用を探そう
この2つの事例は、私たちに過度な事前計画重視と中央集権的管理の危険性を教えてくれる。
どれだけ頑張って計画を作っても、未来を支配することはできない。変化が激しい環境では、当初の計画に固執する姿勢は大きな危険を伴う。