2016年11月号掲載
顧客体験の教科書 収益を生み出すロイヤルカスタマーの作り方
Original Title :Customer Experience 3.0:High-Profit Strategies in the Age of Techno Service.
著者紹介
概要
企業に収益をもたらす「ロイヤルカスタマー」の作り方についての実践的な手引きである。顧客が製品・サービスに興味を示し、それを購入して使い終えるまでの体験。企業収益を左右するといわれる「顧客体験」の概念から、顧客の信頼を生む、素晴らしい体験を提供するための具体的な方法までを説いた、まさに“教科書”だ。
要約
顧客を真に満足させるには
最近、誕生日に妻が買ってくれた高級ブランドのオーディオシステムのスピーカーが壊れた。取扱説明書を読み、あれこれいじった後、メーカーに電話をした。音声メニューに従うと20分も待たされ、その日は諦めた。2日後、再び電話するが、やはり待ち時間が長すぎて諦めた。
結局、私は地元の販売店に出張修理を頼んだ。やって来た技術者も困り果て、メーカーに電話したところ、最終的な結論は、システムをメーカーに返送して修理するしかない、というものだった。
何週間も経って、それは手元に戻ったが、この案件は恐らくメーカーのサポートセンターでは「1度の電話で解決した」と記録されただろう。そのブランド名を耳にするたび、他の人が同じ過ちを犯さないように、私は自分の体験を話したくなる。
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私のように、自社の顧客が体験していること、つまり「カスタマーエクスペリエンス(CX)」が企業の想像以上に悪いことは十分にありうる。
ここで問題にしたいのは、「顧客サービス」ではなくCXだ。サービスはCXの一部でしかない。
経営者の多くは、自社の顧客担当者が礼儀正しくきちんと対応していれば、素晴らしいCXが提供されていると考えている。だが、そうではない。
経営者が犯す過ちの1つが、CXと顧客サービスを明確に識別できないことだ。この誤解のせいで、経営者はCXの強化によって改善できる収益についても理解できないままでいる。経営者のほとんどは自社のCXに満足しており、経営や決算に与える深刻なダメージに気づかないでいる。
CXの現実を認識し、よく考えてほしい。CXにおいて重要なのは、次のような点だ。
顧客の「事前期待」を理解する
顧客の事前期待を理解することは比較的簡単だ。顧客の事前期待は単純で、予期しない不快な出来事を嫌がる。サービスを求める時は、自分にとって最も便利な方法で容易にアクセスしたい。最初に出た担当者に、その場でトラブルを解決してもらいたい。たらい回しはされたくない…。
しかし、こうした顧客の事前期待に応えることは、あなたが想像している以上に複雑だ。