2016年11月号掲載
水力発電が日本を救う 今あるダムで年間2兆円超の電力を増やせる
著者紹介
概要
水力発電は高コストで、時代遅れ。そう見られがちだが、実は、既存ダムを徹底活用すれば、ダムの数を増やさず、年間2兆円超の電力を新たに生み出せるという。純国産で、自然エネルギー。石油や原子力にはない、水力発電の利点を活かした「目からウロコ」の秘策を、元国土交通省河川局長がわかりやすく解説する。
要約
ダムを増やさず発電量を2倍にできる
私はダム建設の専門家で、国土交通省の河川局で主にダムを造ってきた。
ダムは水力発電と密接に関連しており、仕事をする中で、水力発電のことも学んできた。それで、国交省を退職して以来、あちこちの講演会で、水力発電を見直そうという話をしてきた。
言いたいのは、100年後、そして200年後の日本にとって、水力発電は必ず必要になるということだ。今は安価な石油がある。だが、100年後、200年後も今と同じように安価で手に入るだろうか。
ダムは半永久的に使える。100年経ってもダムは水を貯めており、ダム湖の水を電気に変換できる。しかも、ちょっと手を加えるだけで、現在の水力の何倍もの潜在力を簡単に引き出せる。
水力発電の増強の必要性を述べると、「ダムを増やす話なのか」と思う人もいるかもしれない。
それは違う。実は、ダムを増やすことなく、水力発電量を2倍、3倍に増やすことが可能なのだ。その根拠を一言で言えば、こうなる。
「日本のダムの力は十分に発揮されていない」
では、なぜ十分に活用されていないのか。
日本のダムは水を半分しか貯めていない
ダムと聞けば、ほとんどの方がダム湖を思い浮かべるだろう。コンクリートの巨大な壁の上端近くまで、水が豊かにたたえられた姿を想像する。
だが、現実は違う。多くのダム湖の水は半分ほどしか貯まっていない。雨不足のせいではない。実は、わざわざ貯めないようにしているのだ。
ダム湖の水を多く貯めるほど、水力発電は有利になる。水量が多いほど発電量が増える。水力発電にとっては、ダム湖の水は多ければ多いほどいい。それなのに、水を目一杯に貯めない。なぜか。