2017年2月号掲載

日本人として知っておきたい「世界激変」の行方

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著者紹介

概要

トランプ大統領の誕生、覇権主義的動きを強めるロシアと中国、「親中国」化が進む東南アジア…。大変動を始めた世界の捉え方、今後の動きを国際政治学者が解説。全ての構図は「グローバリズムの終焉」と、それに伴う「オールド(旧)/アンチ(反)/ネオ(新)・グローバリズム」という、3勢力の相克から読み解けると言う。

要約

トランプのアメリカで何が起きるか

 ドナルド・トランプ大統領の誕生は、世界を震撼させた。この結果を受け、様々な声が溢れた。「これからいったい何が始まるのか」「世界はどう動こうとしているのか」…。

 こんな時こそ、大局を見据えねばならない。背景にある大きな潮流がわからないと、事を見誤る。

 思えば、トランプ大統領の誕生も、英国のEU離脱を決めた国民投票も、近年の中露の覇権主義的な動きも、この大きな潮流 ―― 「グローバリズムの終焉」を見据えてさえいれば理解できた。

終末期に生まれた3つのグローバリズム勢力

 今、誰の眼にも明らかになっているのは、グローバリズムとはつまり、1980年代の米英の経済的苦境と日独の台頭を受けて、今一度アングロサクソンの覇権を取り戻すためにつくられた「神話」にすぎなかった、ということである。

 この動きは、さらに「冷戦の終結」から「ソ連の崩壊」へと至る流れを受けて、アメリカ一極体制下でのグローバリゼーションの進展が、あたかも未来永劫に続くかのような輝きを見せた。

 だが、それは幻想にすぎなかった。「一極支配」を完成させたかと思われていたアメリカは、その後間もなく、イラク戦争やリーマン・ショックなど大きな失策を繰り返し、一方で、アメリカ一極体制に挑戦しはじめた中露の反撃を招く。経済的にも、アメリカはじめ先進国での「格差」が広がる。そして、テロとの戦争が世界に広がり、難民が世界中に溢れ、不安と反感が地に満ちる。

 ここまで矛盾が噴出してくれば、世界はもはや耐えられず、大きく軋みだす。この状況下に、次の3つの勢力が生まれるのである。

①オールド(旧)・グローバリズム

 これまで世界の経済と政治の「グローバル化」を主導してきた大手金融機関や投資家、それを取り巻くメディアや主要先進国の既成政党などのこと。今回の米大統領選挙でヒラリー・クリントンを支持したようなエスタブリッシュメント勢力だ。

②アンチ(反)・グローバリズム

 ①の金融エスタブリッシュメントが法外な富を手にする反面で、職を失ったり薄給を強いられたりする人々と、その代弁者になろうとする勢力。

 2016年の米大統領予備選で民主党のバーニー・サンダースに共感を覚えたり、ヒラリーの「ウォール街の代理人」とされたイメージを強く嫌ったりした人々。

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