2017年2月号掲載
わがセブン秘録
著者紹介
概要
過去が今を決めるのではなく、未来というものを置くことによって、今が決まる ―― 。日本一の流通グループを率いた鈴木敏文氏が、60年間続けてきた“仕事の仕方”を語った。「未来を起点にした発想」が大切、物事の「本質」を見抜けば仕事はうまくいく…。豊富な経験と、そこから導き出された教訓の数々が詰まった1冊。
要約
「無」から「有」を生む「跳ぶ発想力」
未来に向かって敷かれたレールはない。道は自分でつくるものである。
私はこれまでそう信じて、仕事を続け、生きてきた。レールとは、ふと振り返った時に、自分が歩んできた結果として敷かれているものである。
レールが敷かれていない未来に向かって踏み出すために必要なのは、「発想する力」である。今はない状態から、新しいものを生み出す、いわば「無」から「有」を生む発想力である ―― 。
反対論は「過去の延長線上」から出てくる
これまでにない新しいものを生み出そうとすると、多くの場合、反対にあう。
セブン-イレブンの創業は、マーケティングの学者からも、ダイエーの中内功社長(当時)をはじめとする業界の人々からも、そして社内からも反対された。「日本では各地でスーパーが進出し、商店街のかなりの部分が衰退している状況を見ても、小型店が成り立つはずない」、と。
セブン-イレブンでのおにぎりやお弁当の販売も、周りから「そういうのは家でつくるのが常識だから売れるわけがない」と否定された。
こうした反対論はいずれも、既存の常識や概念の延長線上、あるいは、自分たちの過去の経験の延長線上から出てくるものだった。
これに対し、私はいつも、一歩先の未来像を描き、未来の可能性に目を向けた。
セブン-イレブンの創業もそうである。いくらスーパーが各地に進出しても、大型店だけで流通が成り立ち、すべての需要をまかなえるはずがない。お客様は小型店の役割も必要とする。ならば、「大型店と小型店が共存共栄するモデルを示せないだろうか」と思い立ったのが始まりだった。
コンビニ店舗でのおにぎりやお弁当の販売も、日本人の外食の機会が増えてきた中で、「アメリカのホットドッグに相当するような日本型ファストフードがあったらいいな」と考えたのが始まりだった。そして、「よい材料を使い、徹底的に味を追求して、家庭でつくるものと差別化していけば、必ず支持される」と発案した。
いずれも、過去の延長線上ではなく、一歩先の未来へとジャンプし、「未来を起点にした発想」、すなわち“跳ぶ発想”から生まれたものだった。