2017年6月号掲載
誰が日本の労働力を支えるのか?
著者紹介
概要
2030年までに、日本から700万人以上の働き手が失われる ―― 。来たるべき深刻な人手不足にどう対処すべきか、考察した。示される解決策は、人工知能やロボットなどの「デジタル労働力」と「外国人労働力」の活用。それぞれが担う役割や、今後生じ得る課題などを述べる。未来について考える上で、一助となる1冊だ。
要約
労働力激減時代の衝撃
日本は、人口減少時代に突入している。
国勢調査によると、日本の総人口は2015年度の調査で減少に転じ、前回調査(2010年度)よりも100万人近く少ない1億2709万人となった。
そして、労働力人口(15歳以上で、仕事に就いている、または求職中の人の数)は、1998年をピークに減少が続く。
2015年平均は、1998年より200万人少ない6598万人。四国地方全体の労働力人口は191万人(2015年)なので、約15年で四国分の労働力が日本から消えたことになる。
労働政策研究・研修機構の推計では、経済がゼロ成長、労働参加もこれまで通りなら、労働力人口は2030年には5800万人まで縮小する。2014年度の労働力人口は6587万人。よって、約15年の間に700万人強の労働力を失うことになる。
外国人労働力とデジタル労働力という選択肢
必要な仕事を担うだけの人手が足りないなら、何らかの方法で労働力を補充する必要がある。
その1つの解として考えられるのが、人工知能やロボットなどのテクノロジーを活用し、仕事を自動化し、必要とする人手自体を減らす、という選択肢だ。我々は、この選択肢を「デジタル労働力」と呼ぶ。
一方で、自動化が難しい仕事については、今後も人の手が必要になる。もし、これらの職を担う人手が国内で確保できないなら、「外国人労働力」、すなわち外国人労働者を受け入れざるを得ない。
サービスレベルの切り下げという選択
加えて重要なことは、労働力不足の結果、デジタル労働力または外国人労働力で代替できるかどうかにかかわらず、ある程度のサービスレベルの切り下げを許容せざるを得ないことだ。
外食や小売業界では人手の確保が難しく、店を早く閉めたり、定休日を増やしたりする等の対応を実施する飲食店がすでに出てきている。24時間営業でいつでも買えるサービス水準に慣れている日本の消費者は、その期待値を下げて、店が開いている時間に買い物をする必要が出てくる。
また、たとえテクノロジーや外国人労働者で労働力不足が解消したとしても、これまで通りのサービスが受けられるわけではない。人中心でサービス提供が行われていた接客やレジはロボットに置き換わり、これまで通りの人による柔軟性の高いサービスは受けられなくなるだろう。そんな世の中では、人によるサービスを受けるためには追加でサービス料金を支払うことが必要となる。