2017年12月号掲載
社会保障クライシス 2025年問題の衝撃
著者紹介
概要
高齢者は膨れ上がり、若者世代はそれを支えきれない。あと10年足らずで日本の社会保障は大きな危機を迎える ―― 。野村総合研究所で長年、社会保障の調査に携わってきた著者が、差し迫った社会保障危機について解説。「団塊の世代」「就職氷河期世代」「2025年」をキーワードに、この問題の全体像がわかりやすく示される。
要約
社会保障を揺るがす「団塊の世代」
日本は、世界の中でも充実した社会保障制度を持つ国の1つであり、同時に、税金が比較的安い国である。つまり現在の日本は、高い社会保障水準と低い税金額が両立している国である。
常識的に考えれば、この2つは両立しない。そして残念ながら、実際に両立しなくなる。2025年までに、社会保障に必要な金が膨張し、日本の社会保障制度は崩壊の危機を迎える ―― 。
「団塊の世代」全員が後期高齢者となる衝撃
日本の社会保障に危機をもたらす最大の要因。それは、団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)になることだ。
団塊の世代とは、1947~1949年に生まれた世代を指す。この3年間で約800万人が誕生した。団塊の世代がどれほど大きなボリュームであるかは、その後の出生数と比べればわかる。例えば、2016年の出生数は100万人を切っている。
2015年の国勢調査での日本の総人口は、1億2700万人だった。そのうち、15~64歳の生産年齢人口は7700万人。前期高齢者(65~74歳)は1750万人、後期高齢者は1640万人。高齢者を合計すると3390万人である。
この数字から、2025年の人口構造を予測すると、総人口は1億2070万人で、2015年に比べて630万人減少。おおよそ前期高齢者1500万人、後期高齢者2200万人となる。
高齢者の暮らしと経済
では、後期高齢者の暮らしの実態とは、どのようなものか。まず世帯数、世帯主の年齢を見ると、予測によれば、2025年には全体の世帯数は約5000万、世帯主が65歳以上の世帯が2020万、そのうち75歳以上が1190万になる。
次に高齢者の所得を見ると、2015年の国民生活基礎調査によると、全世帯の平均所得金額は542万円、高齢者世帯は297万円となっている。
高齢者世帯の所得分布については、100万円未満が14%、100万~200万円未満が27%、200万~300万円未満が22%、300万~400万円未満が18%である。
同じ調査に、世帯の生活意識を聞く設問があるが、ここでは、高齢者世帯の26%が「大変苦しい」、32%が「やや苦しい」と回答している。合計すると、60%程度が「苦しい」と答えている。
生活費については、「家計の金融行動に関する世論調査」(2016年)によれば、老後のひと月あたり最低予想生活費の平均は、60歳代の回答者が29万円、70歳以上で28万円だった。また「家計調査」(2016年)によれば、2人以上の無職世帯の1カ月の平均支出は27.8万円だった。