2018年1月号掲載
働き方改革 個を活かすマネジメント
著者紹介
概要
安倍政権の「働き方改革」を受け、多くの企業が、従業員の賃上げ、労働生産性向上、長時間労働の是正などの施策に取り組んでいる。だが、改善が進んでいるとは言い難い。どうすれば、働き方は変わるのか? 企業の現場や人材活用に精通する著者たちが、部下全員を輝かせ、幸せにし、成果を出す新しいマネジメントを説く。
要約
働き方改革の5つの源流
「働き方改革」は、第2次安倍内閣が発信した政治課題である。雇用・労働政策の中で、これほど大きな政治課題となったテーマはかつてない。
そうなったのには理由がある。それはこれまでに積みあがった多様な社会課題が、働き方改革という1つのテーマに統合されていったからだ。
この働き方改革の流れは、次に示すように、5つの源流が集まり、大河になっている。
①賃上げという源流
アベノミクスは、大胆な金融政策でデフレを脱し、企業業績の向上を賃上げという形で家計に波及させ、消費を増やすという経済政策だ。確かにこれによって企業業績は回復し、賃上げにも一定の効果はあったが、消費は低迷したままである。
②長時間労働の是正という源流
日本は欧米諸国と比べて労働時間が長い。フルタイム労働者の労働時間はこの20年間ほぼ横ばいで、改善が進んでいるとはいえない状況だ。
③第4次産業革命という源流
第4次産業革命といわれるテクノロジーの進化をいかに社会に貢献する形で取り込むかという課題。具体的には、AIやロボットによる省力化、金融サービス事業のフィンテックなどがある。
④人手不足という源流
労働力人口が長期的に減少し、現在の好景気を背景に求人難が生じている。特に建設、飲食、物流が深刻で、「人出不足倒産」も起こり始めた。
⑤一億総活躍という源流
一億総活躍は主に少子化対策を起点とする。女性を中心としたダイバーシティ経営を推進し、女性活躍推進法の延長に働き方改革を据えた。
以上5つの源流が合流して大河となった働き方改革だが、その流れにストップをかける存在がある。それが、私たちが長年慣れ親しんだ「日本的雇用システム」だ。
例えば、長時間労働の是正などは、従来の雇用システムを変えなければ、導入しても効果は上がらない。そのために導入をためらう企業が多い。