2018年5月号掲載
21世紀の歴史 未来の人類から見た世界
Original Title :UNE BREVE HISTOIRE DE L'AVENIR
著者紹介
概要
アメリカによる世界支配は、2035年までには終焉する。指導者がいなくなれば、国際情勢は混沌とした状態になる。そして2050年頃、すべてマネーで決着がつく、究極の市場主義に支配された〈超帝国〉が出現する ―― 。“ヨーロッパ最高の知性”と称される経済学者・思想家のジャック・アタリが、21世紀の政治・経済を予測した“未来の歴史書”。
要約
アメリカ帝国の終焉
今後50年先の未来は、予測できる。
まず、アメリカ帝国による世界支配は、これまでの人類の歴史から見てもわかるように一時的なものにすぎず、2035年よりも前に終焉する。
次に、〈超帝国〉〈超紛争〉〈超民主主義〉という3つの未来の波が次々と押し寄せてくる。筆者は、この3つが混ざり合って押し寄せ、2060年頃に超民主主義が勝利すると信じている ―― 。
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民主主義と市場が登場して以来、歴史の進展の方向性は1つである。すなわち、歴史は政治的自由を拡大し、欲望は市場で表現される方向に導かれている。数世紀にわたって、農民は都会へと向かっている。誕生して数世紀が経つ〈市場民主主義〉は、「中心都市」の周辺で拡大している。
現在まで市場は、9つの市場形式を経てきた。その中心都市の推移を順に記すと、次の通りだ。ブルージュ、ヴェネチア、アントワープ、ジェノヴァ、アムステルダム、ロンドン、ボストン、ニューヨーク、ロスアンジェルス。
いずれの都市も過剰な出費により衰退し、競争相手となった都市にその座を譲ってきた。
現在、9番目の中心都市ロスアンジェルスも、これまでの中心都市が抱えてきたのと同じ脅威にさらされている。つまり、住民の安全は脅かされ、そこで活動するクリエーター階級は誠実ではなく、産業テクノロジーの進化は鈍化した。また、社会的不平等が拡大し、住民の怒りは爆発寸前だ。巨大化する債務も懸念事項である。
現在、インターネットはアメリカの植民地状態であり、そこでは英語が使われ、富の大部分は宗主国アメリカが吸い上げている。しかし、インターネットはいずれ自治権を獲得し、アメリカから独立して勢力を伸ばすようになる。
アメリカ企業も自国を離れる。外国に拠点を置く企業や研究機関によって様々な部門で競争が激化する。よって、アメリカの戦略的産業は、その生産・研究の拠点を外国に移す。そして、アメリカの生産力は減退し、失業率は史上最悪に達する。
こうして2030年頃には、ロスアンジェルスにはクリエーター階級が集まらなくなり、イノベーションや資金調達の中心地でなくなる。