2018年7月号掲載
スマート・ジャパンへの提言 日本は限界費用ゼロ社会へ備えよ
Original Title :MR. JEREMY RIFKIN'S PROPOSAL FOR THE SMART JAPAN
- 著者
- 出版社
- 発行日2018年4月25日
- 定価1,430円
- ページ数221ページ
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著者紹介
概要
世界は今、経済および環境の危機に直面している。GDPの伸びは鈍り、異常気象が各地で観測されている。この危機を脱するため、世界は、そして日本は今後、どのような社会を目指せばよいのか。メルケル独首相や中国指導部のブレーンを務める経済学者が、新しい社会モデル ―― 「限界費用ゼロ社会」についてわかりやすく語る。
要約
日本とドイツの現状
世界は、21世紀の新しい経済と環境の時代へと移行しつつある。しかし日本は、中途半端な状態にある。それは、日本とドイツの現状を比べてみるとよくわかる。
両国はグローバル市場における、世界一流のプレイヤーである。日本経済は世界第3位、ドイツ経済は世界第4位に位置する。
ところが、ドイツがスマートでグリーンな「第3次産業革命」を急速に推し進めようとしているのに対して、日本は過去との訣別を恐れ、確固たる未来像を抱けずにいる。
福島、ドイツ、第3次産業革命
日本では2011年3月11日、巨大な地震と津波が福島の原子力発電所を破壊し、放射性物質が放出されて広範な土地が汚染されるという、最悪の核災害が起こった。
福島第一原発の事故を受け、ドイツではアンゲラ・メルケル首相が、2022年までに国内の原子力発電所をすべて段階的に稼働停止すると発表。また、ドイツの製造大手シーメンス社は、今後、原発の建設には関与しないと発表した。
ドイツは原子力発電から段階的に脱却することにより、第3次産業革命への移行を段階的に進めるチャンスを得たのだ。
一方、日本は、原子力産業を復活させようとする業界と、日本経済を「IoT」(モノのインターネット)時代へと方向転換させようとするデジタル企業や業界との板挟みになってもがいている。
エネルギーと国際競争力
この新たな現実が最も表れているのが、新しい再生可能エネルギーヘの移行だ。
ドイツでは再生可能エネルギーの大半が、電力協同組合を結成した何百万もの家庭と、何千、何万もの企業によって、それぞれの地元で生み出されている。
ドイツを動かしている電力は、2025年には、その45%が太陽光と風力のエネルギーから生み出され、2035年には6割が再生可能エネルギーによって生産され、2050年にはその数字は8割に達する見通しだ。
つまりドイツは、スマートでグリーンなデジタル経済の道を順調に進んでいて、製品とサービスを生産・流通させるのに必要な電力をつくり出す「限界費用」がほぼゼロヘ近づく、ということだ。