2018年7月号掲載
宇宙ビジネスの衝撃 21世紀の黄金をめぐる新時代のゴールドラッシュ
著者紹介
概要
副題「21世紀の黄金をめぐる新時代のゴールドラッシュ」。今、アマゾンなど巨大IT企業やシリコンバレーのベンチャーが、続々と宇宙開発に乗り出している。その勢いは、19世紀アメリカのゴールドラッシュにたとえられるほど。彼らの狙いは何か?宇宙がもたらす可能性は? 近年、急拡大している宇宙ビジネスの全貌を明かす。
要約
IT企業の巨人は宇宙を目指す
宇宙開発というと、国や政府のやることだと考える人が多い。しかし民間による「宇宙ビジネス」が、この10年余りで一気に加速している。
イーロン・マスクのロケット開発
例えば、電気自動車のテスラを率いるイーロン・マスク。彼は、2002年にスペースXという会社を立ち上げて、宇宙ビジネスに参入した。
同社は、ロケット「ファルコン1」を開発し、2008年に打ち上げに成功した。その後「ファルコン9」や、世界一の巨大ロケット「ファルコンヘビー」を開発。宇宙輸送を手がけるロケット市場で、シェアを急速に伸ばしている。
スペースX躍進の理由は、低コストにある。
同社は、低コストでの製造を可能にするために、エンジンから部品に至るまで、ほとんど自社で開発している。通常の大型ロケットの打ち上げ費用は100~200億円くらいだが、スペースXは60億円台。ロケットの再利用でさらに30%削減予定で、ロケットの価格破壊といわれている。
ジェフ・ベゾスの宇宙計画
アマゾン・ドット・コムの創業者、ジェフ・ベゾスも、宇宙ビジネスに参入している。
彼が航空宇宙企業ブルーオリジンを立ち上げたのは2000年。アマゾン創業のわずか6年後だ。
彼の宇宙へのビジョンは「100万人が宇宙に住んで働く」こと。地球経済圏をさらに大きくし、宇宙経済圏に拡大していきたいというものだ。
同社が開発しているのは、宇宙旅行や宇宙実験ができる、垂直離着陸型のサブオービタル(準軌道)機「ニュー・シェパード」である。これは地面から垂直に打ち上げられ、垂直に上昇して高度100km超まで到達する。上空で先端に搭載されている有人カプセルを切り離すと、カプセルは弾道飛行をし、約4分間の無重力状態が体験できる。
カプセルはパラシュートを開いて帰還する。一方、ロケットの部分はそのまま垂直に降下し、着陸寸前にエンジンに再着火、減速しながら陸地に着陸して回収される。そして、機体の整備や燃料補給を行った後、再び打ち上げられる。
2015年11月、ニュー・シェパードは高度100.5kmまで到達した後、地上への着陸に成功した。その後、同じ機体で2016年に4回、100km超の試験飛行に成功。2017年12月から改良型ニュー・シェパードで、ダミーとなるマネキン乗客を搭乗させて帰還に成功している。