2018年7月号掲載
職業としての政治/職業としての学問
Original Title :Politik Als Beruf / Wissenschaft Als Beruf
- 著者
- 出版社
- 発行日2009年2月23日
- 定価1,760円
- ページ数263ページ
※『TOPPOINT』にお申し込みいただき「月刊誌会員」にご登録いただくと、ご利用いただけます。
※最新号以前に掲載の要約をご覧いただくには、別途「月刊誌プラス会員」のお申し込みが必要です。
著者紹介
概要
20世紀を代表する社会科学者、マックス・ウェーバーによる講演2つを収録した書である。このうち、本稿では『職業としての政治』を紹介する。政治家とはどのような職業か。求められる資質とは。第1次大戦に敗北したドイツで、若者たちに訴えかけた内容は、時代を超え、政治のあり方を考える上で貴重な示唆を与えてくれる。
要約
国家とは何か、政治とは何か
「職業としての政治」とは何か、それにはどのような意味があるのか。
この政治(ポリティック)という概念は広く、銀行の為替政策(ポリティック)、労働組合の基本方針(ポリティック)など、様々な分野で使われている。ここでは、この政治という語を、政治的な団体、特に国家の指導と、その指導に影響を与えようとする行為という意味に理解しておく。
国家とは何か
では、社会学的な観点から見ると、「国家」とはどのようなものだろうか。
社会学的には、国家をその内容から、すなわち国家がどのような活動をするのかという視点からは定義できない。政治的な団体は、あらゆる種類の課題に取り組もうとしてきた。
現代の国家を社会学的に定義するならば(その活動の内容ではなく)、すべての政治団体が所有している、ある特殊な手段によるしかない。その特殊な手段とは、物理的な暴力である。
かつて、ソ連の全権大使だったトロツキーは、「すべての国家は暴力を根拠としている」と喝破したが、これは名言である。
過去には、氏族をはじめとする様々な団体が、ごく普通に物理的な暴力を行使した。だが現在では、国家以外のすべての団体や個人には、物理的な暴力を行使する権利が否定されている。暴力を行使できるのは、国家が承認した場合に限られる。
だから、国家は暴力を行使する「権利」の唯一の源泉とみなされていることになる。
政治とは何か
だとすると「政治」とは、複数の国家の間で、あるいは国内の複数の人間集団の間で、権力の分け前を求めて、あるいは権力の配分をめぐる影響力を求めて争われる営みだと定義できるだろう。
これは、日常的な言葉遣いからもうかがうことができる。ある問題について、これは「政治的な」問題だと言う時、ある決定について、これは「政治的な」意味をもつ決定だと言う時に意味されているのは、いつも次のようなことなのだ。
すなわち、その問題を解決するためには、権力の分配、権力の確保、権力の(所有者の)変動に対する関心が決定的な意味をもっていたか、その決定の条件となっていたか、ということである。