2018年9月号掲載
おもてなし幻想 デジタル時代の顧客満足と収益の関係
Original Title :THE EFFORTLESS EXPERIENCE
- 著者
- 出版社
- 発行日2018年7月18日
- 定価2,200円
- ページ数411ページ
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著者紹介
概要
感動的なサービスを提供して、顧客ロイヤルティを高める ―― 。多くの企業が取り組む「おもてなし」は、割に合わない! 本書はその根拠を、約10万人を対象に行った調査結果を基に示し、行き過ぎたサービスはロイヤルティを損なうと説く。では、企業はどうすればいいのか? カギは、「顧客に手間をかけさせないこと」だ。
要約
顧客ロイヤルティを巡る疑問
今日では、新製品を市場に投入すると、ライバルたちはすぐそれと同じ製品やサービスを世に出す。同じものだらけの世界では、製品、ブランドによって差別化を図るのは難しい。
そこで、多くの企業が目を向けてきたのが、カスタマーサービスである。最高のカスタマーサポートを提供して、顧客ロイヤルティを高め、継続的な関係を築くことを目指そうというものだ。
しかし、この戦略は本当に正しいのだろうか?企業は上質のサービスを提供することで差別化を図り、顧客ロイヤルティを構築しようと努めるべきなのか?
重要な疑問
私たちは過去数年間に、世界中の多様な業界のカスタマーサービス・リーダーたちと話をしてきた。そこから浮かび上がってきたのは、顧客ロイヤルティに関する3つの根本的な疑問である。
- ・顧客ロイヤルティを高める上で、カスタマーサービスはどの程度重要か?
- ・顧客ロイヤルティを高めるために、カスタマーサービスができることは何か? ほとんどの企業は、何らかの形の「非凡なサービス」を作り出そうと努力し、顧客とよりよい関係を築くよう努めている。ところが、常にそれを実現するのはおそろしく困難である。
- ・どうすれば運営コストの削減とロイヤルティの向上を両立させることができるか?
私たちの調査方法の概要
これらの疑問の答えを探るべく、私たちは調査を行った。まず、ウェブサイトまたはコンタクトセンターへの電話を通じて、カスタマーサービスとやりとりした9万7000人余りの顧客に、いくつかの質問に答えるよう求めた。その質問は、次の3つのカテゴリーに分類される。
- ①サービス担当者と接した時の顧客の経験についての質問
- ②顧客がサービス担当者とのやりとりに注がねばならなかった労力の量、または手順の数(これを「顧客努力」と呼ぶ)についての質問
- ③顧客に喜ばしい経験を提供する企業の能力についての質問
これらの質問に加えて、回答者の年齢、性別、所得など、その後の分析で使う情報も集めた。
調査の最後に、エクスペリエンス(経験)の満足度と、企業に対するロイヤルティの評価を顧客に求めた。具体的には、「その企業から購入し続ける」「購入の割合を増やす」「企業のよさを人に伝える」可能性はどれくらいか質問した。
4つの結論
上述の調査から、私たちは次の4つの結論を導き出した。
①喜びの戦略は割に合わない
経営幹部は、「顧客の期待を超えるサービス」が顧客ロイヤルティを高めると信じている。しかし、9万7000人余りの顧客の回答を分析してわかったのは、「期待以上のサービスを受けた顧客」と「期待が満たされただけの顧客」のロイヤルティには、差がまったくないという事実だ。
重要なポイントは2つある。