2018年10月号掲載
新世界秩序 21世紀の“帝国の攻防”と“世界統治”
Original Title :Demain, qui gouvernera le monde?
著者紹介
概要
19世紀は英国が、20世紀は米国が世界を支配した。では、21世紀は? 経済学者・思想家のジャック・アタリ ――“ヨーロッパを代表する知性”が「21世紀の新世界秩序」を提示。彼の見立てによれば、世界は無秩序とカオスに陥る。そんな未来における切り札は“結束”だ。世界が結束すれば、持続的な成長は可能だという。
要約
世界秩序の転換期
人類の歴史とは、帝国による世界支配の歴史であり、世界秩序の変遷の歴史である。現在、帝国の攻防は激化し、世界はカオス化し、世界秩序は大きく転換しようとしている。
その理由は、アメリカの孤立主義にある。これはブッシュ(子)政権時代に始まり、オバマ政権で確立し、トランプ政権時代に完成した方針だ。この方針によって、アメリカの同盟国は安全保障上、重大な危機に直面している。アメリカが防衛の傘を、誰とも共有する気がなくなったからだ。
この孤立主義は、経済の分野でも推し進められている。あからさまな保護主義政策が推進され、アメリカの同盟国もその攻撃対象になっている。
大国の頂点に立つ3人
現在、トランプも含めて、米・露・中、3つの大国の頂点に立つ3人は、誰もが長い任期をもち、その戦略はどれもはっきりしている。
プーチンのロシアは防衛拠点を固め、経済的・軍事的に欧州を封じ込めることによって、超大国の地位を取り戻そうとしている。習近平の中国は地球全体で様々な同盟関係を結び、資源調達の道を確保しようとしている。そして、ユーラシアにかつての中華帝国を再興しようとしている。
今後、従来の世界秩序は崩壊し、日本や欧州など、同盟国でも容赦なく攻撃される。特に欧州に対しては、3つの超大国はもはやパートナーとは見なさず、単なる餌食の1つとしか思っていない。
カオス化する世界
こうした状況に対応して、多くの国々でナショナリズムの影響力が強くなっている。世界中で、ポピュリズムや原理主義の台頭がさらに進んでいくだろう。世界から協調性は失われ、様々な問題に共同して対処する能力も失われていく。
世界は今後、経済、通貨、軍事、環境、人口、倫理、政治などすべての分野で、巨大なカオスに陥っていく可能性がある。そうなると、大規模な経済・金融危機、地球規模の戦争など、世界が最悪の事態に陥る可能性も無視できない。
次に世界を統治する国は?
では、21世紀の世界秩序はどうなるのか?
アメリカは世界一の大国の地位を、今後も長期にわたって維持する力がありそうにも見える。また国際機関は、人類の主要な問題に対処する能力を備えているようにも見える。だが、よく見れば、それが見かけでしかないことがわかる。