2018年10月号掲載
デス・バイ・アマゾン テクノロジーが変える流通の未来
著者紹介
概要
拡大を続けるアマゾンは、多くの流通・小売企業を窮地に追い込んでいる。そんな“巨大帝国”の次なるターゲットは何か。ライバル企業は、どのような戦略で生き残りを図っているのか。同社の影響を受けずに業績を伸ばす「アマゾン・サバイバー」の動向などを紹介しながら、アマゾンに「殺されない」ための方策を考える。
要約
アマゾンに「殺される」企業
「デス・バイ・アマゾン」 ―― 。これは、アマゾンの台頭によって窮地に陥るであろう上場企業銘柄54社の株価を指数化したものである。2012年に米国の投資情報会社が設定したインデックスで、「アマゾン恐怖銘柄指数」と訳される。
アマゾン恐怖銘柄指数は、その名が示す通り、アマゾンの株価が上昇すれば、それに反比例して下落していくのが特徴だ。
例えば、2017年6月、高級スーパーのホールフーズ・マーケットをアマゾンが買収したと発表された時、ホールフーズのライバルとなる小売チェーンの株価は軒並み急落。アマゾン恐怖銘柄指数は一時、時価総額ベースで320億ドル下落した。
このように、アマゾンの躍進によって、多くの企業が存続の危機に直面している。
消える店舗
現在の米国では、百貨店、アパレルを中心に小売店舗の閉鎖が相次いでいる。例えば2017年、衣料品チェーン大手のギャップ(GAP)は、今後3年間に約200店を閉鎖すると発表した。
同年、米トイザらスは連邦破産法11条の適用申請をした。かつての「玩具業界の巨人」の破綻の背景にも、アマゾンの存在がある。アマゾンの玩具関連の売上は、2016年時点で40億ドル。トイザらスの全体売上の3分の1強に迫っていた。
アマゾンが初のリアル店舗をオープン
伝統的な小売業が店舗閉鎖を余儀なくされる一方で、アマゾンは2015年、米シアトルに初のリアル店舗「アマゾン・ブックス」をオープンさせた。
すでにEC(eコマース)で大成功を収めているアマゾンが、なぜリアル店舗に進出するのか?
その目的は、顧客との関係を一層深めることと、同社の会員サービス「アマゾン・プライム」の会員増にある。この店舗では、プライム会員はECサイトと同じ割引価格で購入できる。だが、それ以外の客は定価だ。つまり、「プライム」のメリットを身をもって経験してもらうことで、一般客に会員になる動機付けを行っているのだ。
「アマゾン・ゴー」の衝撃
アマゾンのリアル店舗として注目を集めているのが、2016年12月に発表した、レジなし店舗「アマゾン・ゴー」である。
アマゾン・ゴーの特徴は、店内での精算が不要であることだ。顧客は事前に専用アプリをダウンロードし、自分のアマゾン・アカウントとクレジットカードを紐づけておく。入店時にアプリを起動し、QRコードを入り口ゲートにかざして店に入る。買いたい商品が見つかれば、バッグに入れて、そのまま店を出ればよい。店を出て数分後に、電子メールでレシートが届く。