2018年11月号掲載
「働き方改革」の嘘 誰が得をして、誰が苦しむのか
- 著者
- 出版社
- 発行日2018年9月19日
- 定価924円
- ページ数235ページ
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著者紹介
概要
安倍政権が主導する「働き方改革」。柔軟な働き方が可能になり、長時間労働が是正されるなど、政府は働く人のメリットを謳うが、果たして本当なのか? 取材を続けてきた新聞記者が、改革の実態を明らかにし、警鐘を鳴らす。「働き方改革は名ばかりで、働かせる側の論理でつくられた、財界主導の『働かせ方改革』」だ、と。
要約
高度プロフェッショナル制度の罠
政府が主導して「働き方改革」が進められている。では、何のために働き方改革をするのか。
働き方改革は、一見すると「長時間労働の是正」や「同一労働同一賃金の導入」など、働く人にとってメリットが多い内容のように思える。
だが、子細に見ると、これらの看板の陰に隠れるようにして、「残業代ゼロ制度」などといわれる高度プロフェッショナル制度(高プロ)の創設や、裁量労働制の対象拡大などがちりばめられている。高プロや裁量労働制は、長時間労働是正とは明らかにベクトルが逆だ。なぜ、このような矛盾に満ちたものになったのか。
それは、安倍政権が財界・経済界とあうんの呼吸で進めてきた働き方改革だからである。
形ばかりの合意
神津連合会長
「(高プロは修正しないと)長時間労働がさらに拡大しかねない。働く人の健康確保のための修正をよろしくお願いしたい」
安倍首相
「しっかり受け止めて検討する」
これは、2017年7月13日の政労トップ会談でのやり取りである。“残業代ゼロ法”と批判してきた高プロについて連合(日本労働組合総連合会)が「容認」に転じた、とメディアは報じた。だが実態は、安倍政権が強行突破という批判をかわすため、形ばかりの合意をお膳立てしたものだった。
財界の理想論と連合の反対論
高プロは、研究開発職など高度の専門知識を持ち、年収1075万円以上の働き手を、労働時間規制の対象から外す制度だ。労働基準法は法定労働時間を超えて働かせる場合、割増賃金の支払いを義務付けている。しかし、高プロの対象になると、残業をしても割増賃金が支払われなくなる。
実現を要請してきた経団連は、対象者がごく一部に限られると強調。「短時間で成果を出せば生産性が高まり、自由な時間も増える」などと、理想論を繰り返した。対する連合は、「現行でも成果と報酬を連動させる柔軟な働き方は可能」などの理由で、一貫して反対してきた。