2018年12月号掲載

「本当の大人」になるための心理学 心理療法家が説く心の成熟

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著者紹介

概要

「若々しく元気で活躍すること」に重きを置く、今の日本社会。こうした風潮の中で、大人が大人として成熟するのは難しい。実際、大人として未熟な中高年は少なくない。どうすれば「本当の大人」になり、心から満足のいく人生を生きられるのか。内面性に軸を置いた、充実した生き方をするための指針を、心理療法家が示す。

要約

日本の大人はなぜ未熟なのか?

 大人が大人になるのがとても難しい時代だ。

 大人が内面的に成長・成熟した大人となって、心から満たされた人生を生きるのが難しい。多くの人が、迷いや不確かさを抱えながら生きている。

 なぜか。それは、今の日本社会では、「いつまでも若々しくあること」「元気に活動すること」といった外的な価値にばかり重きが置かれ、「内面的な成長・成熟」ということを重視する価値観が育まれてこなかったからだ。

「人生の午後」における内的成熟

 では、内面的な成熟とはどのようなものなのか。心理療法家カール・ユングの「人生の午後」という言葉が、それを理解するキーワードになる。

 ユングは、中高年期に人は人生の大きな転換点(人生の正午の時間)を経験して、後半生を生きていくようになるという。

 人生の午前は、生きるのはそれほど難しくない。40~45歳ぐらいまでは、仕事で業績を上げる、結婚して子どもを育てる、といった「外的な事柄」にエネルギーを向けていればよかった。

 だが、人生の後半に入ると、内面に意識が向かい始める。「私は人生で果たすべきことを果たしつつ、日々を生きているか」と、自分の人生に与えられた使命や役割を問い確かめ始めるのだ。

 この「人生の転換点」について、ユングは言う。

 ユングが言う「下降を通じて上昇する」ことが、中高年における「人格の成熟」ということだ。しかし、今の日本では、これができる人とできない人の間が大きく離れている。いわば「人格の成熟度格差」が拡大しているのだ。

中高年で「人生の問い」は転換する

 「自分の夢は何だろう」 ―― 人生の前半にはこんな問いを発する。これは「自己実現」の問いだ。

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