2019年3月号掲載
右脳思考 ロジカルシンキングの限界を超える 観・感・勘のススメ
著者紹介
概要
ロジカルシンキング全盛の今日。「経験や勘で仕事をするな」と部下に説く上司は少なくない。だが、論理的思考だけで成果はあがるのか? 著者の内田和成氏は、直感や勘など、論理では説明できないもの ―― 「右脳」の力を活かすことも必要だ、と指摘する。好評既刊の『仮説思考』『論点思考』に続く、思考シリーズ3部作の完結編。
要約
右脳を使うことが重要な理由
あなたには、このような経験がないだろうか。
良いアイデアを思いつき、それを口にすると「何を根拠にそんなことを言うのだ」と詰められた。ある企画に対して「何かおかしいな」と感じても、理屈が立たずに声を上げられなかった…。
こうした状況に陥った時、大事なのは、物事を論理的(ロジカル)に考え、数字などのデータで証拠を見せた上で、筋道立てて説明することだ。それには、ビジネススクールで学ぶような分析手法や方法論が必要である。
しかし、長年のビジネス経験から言えるのは、ビジネススクールの教科書に書かれている知識だけでは不十分であるということだ。
手堅くいくか、大きなヒットを狙うか
例えば、新製品を発売する場合。競合より多くの点で優れているという調査結果の出たA製品と、特定のセグメントにしか受け入れられない可能性が高いが、極めてユニークなB製品、どちらを市場に出すかという判断を求められることがある。
論理的に決めるのであれば、投資収益率(ROI)や成功確率を比較するなどの方法を取る。
ただ、実際にはこうした決め方より、意思決定者がどちらの方が良さそうかを判断して決めることが多い。というのも、A製品は手堅いが、小さなヒットで終わってしまう可能性が高い。一方、B製品は当たるかどうかはわからないが、ヒットした場合は新しい市場をつくる可能性がある。どちらが良いかは一概に決められるものではない。
勘を働かせて、仕事の成果をあげる
こうした場合は、論理的に正しい選択をするのではなく、うまくいきそうな選択肢を選ぶべきだ。その際、経営者は経験に基づく判断や勘などで物事を決めることが多い。
本書では、直感、勘など、論理(ロジック)では説明できないものを総称して「右脳」、論理で説明できるものを「左脳」と呼ぶ。この両方、左脳だけでなく、右脳を働かせることで、仕事の成果をあげられる。そのことを伝えたい。
右脳の使い方
それでは、仕事上のプロセスを例に、右脳をどこで、どう使うのかを解説しよう。