2019年6月号掲載
データ・ドリブン・エコノミー デジタルがすべての企業・産業・社会を変革する
著者紹介
概要
「データ・ドリブン・エコノミー」とは、リアルな世界から集めたデータが新たな価値を生み、企業・産業・社会を変革していく一連の経済活動のこと。今後の進展が予想される、このデータ駆動型経済によって、ビジネスはどう変わるのか? 企業や個人はどう対処すべきか? IoTの第一人者が、デジタル化の未来を見通す。
要約
データ・ドリブン・エコノミーの本質
「データ・ドリブン・エコノミー(データ駆動型経済)」とは、リアルな世界から集めたデータが新たな価値を生み出し、あらゆる企業・産業・社会を変革していく一連の経済活動を指す。
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私たちは今、データが経済・社会の変革をもたらす新しい時代の幕開けに立ち会っている。
インターネットが普及し始めてから現在までの約20年間にわたるデジタル革命は、ネット上の「ウェブデータ」が主役だった。閲覧履歴、購買履歴、SNSの個人関連データなどが価値をもたらし、これらのウェブデータをうまく集めた企業が競争優位に立つことができた。
その代表格が、アメリカの大手IT企業である。グーグルやアマゾンなど、ウェブデータを握る企業がプラットフォーム(商品・サービスやコンテンツを集めた基盤)を構成し、そこにサードパーティが集まるエコシステム(様々な製品・サービスや企業・業界が連携することで競争力を生み出すビジネス生態系)を形成している。
主役はウェブデータからリアルデータへ
しかし、これからはリアルな世界の「リアルデータ」が主役になる。
私たちの周りにはデジタル化されていない膨大な物的資産と、経験と勘で行われてきた膨大なアナログプロセスがある。今、こうしたリアルな世界からデータを集める動きが活発になりつつある。
これから始まる物的資産のデジタル化でも、データを多く集めてプラットフォームを構成した者が勝つ。しかも、これまでにグーグルなどが集めてきたウェブデータに比べて、これから集めるリアルデータの量は比較にならないほど膨大だ。
リアルデータは製造業、農業、土木、都市などあらゆる産業セグメントにわたる。現時点で膨大な量のリアルデータを収集している企業はない。つまり、誰にでも勝利をつかむチャンスがあるのだ。
デジタル化で収益増をとげた欧米スポーツ業界
具体例を見てみよう。例えば、アメリカのバスケットボール業界では、デジタル化投資が活発だ。
アリーナの天井に4台のカメラを設置し、撮影した映像をもとに選手の動きをデジタル化している。ある選手は何ヤード離れたところからシュートを打ち、その成功率は何%かなど、すべてのプレーをデータ化し、分析する。