2019年7月号掲載
ブラック職場があなたを殺す
Original Title :Dying For a Paycheck
- 著者
- 出版社
- 発行日2019年4月16日
- 定価1,980円
- ページ数321ページ
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著者紹介
概要
長時間労働、上司の過剰な要求…。今日、過酷な労働条件が当たり前の職場は少なくない。仕事量は多く、人手は足りず、上司から急かされ続けて、心を病む。この種の話は枚挙にいとまがない。こうした「ブラック職場」で働く人の命を守るには、何をすべきか? 組織行動論の大御所が、職場環境を改善するための5原則を示す。
要約
死に至る職場
アメリカの配車サービス大手ウーバーのエンジニアだったジョゼフ・トーマスは、2016年に銃で自殺した。父親と妻は職場のストレスが原因と非難している。
トーマスのケースは決して特殊ではない。同社では多くの社員が「パニック発作、薬物乱用、抑鬱症状、ストレスが原因の入院」を経験している。
仕事のストレスは万人に降りかかる
仏通信大手のフランス・テレコムでは、2008年1月~2010年春の期間に社員46人が自殺した。専門家は、コスト削減とリストラが原因だと指摘している。また、電子機器受託生産の最大手フォックスコンでは、2010年1~5月の4カ月間に、中国で社員9人が自殺した。
仕事のストレスは、国も職業も社会的地位も関係がない。職場環境のストレス要因の中でもとりわけ問題なのは、低賃金、シフト勤務、そして仕事の裁量の乏しさである。仕事の裁量とは、自分の判断で仕事を進めたり、ある程度まで自分の主体性を発揮したりできるなど、「任される度合い」と言い換えることができる。
「働きがいのある会社」でもストレスがたまる
こうした問題は、地位の低い就労者に当てはまるとされてきた。だが専門職や役員クラスも、同じ悩みを持つ。
一流大学で経営学を修め、セールスフォース・ドットコムで働くある女性は、管理職として同社に入ってすぐに抗鬱剤に頼るようになったと話す。
複数の上司からの過剰な要求、長時間労働、些細な失敗を理由にいつ降格、解雇されるかわからないという恐怖を乗り切るため、彼女は長年、心理療法、カウンセリングに頼ってきたという。
ハイテク企業で働く「成功した」人たちは皆そうだが、彼女も自分の仕事と生活をコントロールできなかった。セールスフォースは、フォーチュン誌が毎年発表する「働きがいのある会社」ランキングで2018年の1位に輝いたが、この女性管理職のようなケースは同社でも珍しくないという。
健康な職場を支える2大要素
健康な職場にとって、必要不可欠なものが2つある。1つは「仕事の裁量性」の確保、もう1つは「ソーシャルサポート」の確立である。
仕事の裁量性と健康
1970年代に、英国の疫学者マイケル・マーモットのチームは、ある興味深い事実に気づいた。英国の公務員の場合、地位が上がるほど、脳血管障害(CVD)の発症率と死亡率が下がるのだ。