2019年8月号掲載
伝え方大全 AI時代に必要なのはIQよりも説得力
Original Title :FIVE STARS
著者紹介
概要
AI時代に必要なのは、説得力だ! 人工知能が普及し、仕事が自動化されても、人をやる気にし、説得する力 ――「伝える力」があれば、コンピューターに仕事を奪われる心配なし。本書では、ジョン・F・ケネディら「伝え方の達人」の実例を紹介し、「5秒で全体像を伝える」「感情で心を揺さぶる」等々のノウハウを伝授する。
要約
賢人は言葉で世界を動かした
今ほど、「伝える力」が重要な時代はない。
21世紀は、人の価値がアイデアで量られる知的経済の社会だ。自分のアイデアに価値があると周囲を説得する力は、大きな強みになる ―― 。
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米国が1961年に始めた、アポロ計画。人類史上有数の成果、月面着陸へと米国を駆りたてたのはジョン・F・ケネディである。彼の言葉が多くの人に感銘を与え、行動に駆りたてた。
その時、ケネディの演説を支えたレトリックは次のようなものだ。
①NASAの目標を1つに絞った
NASAの創設時、優れた宇宙技術の確立や科学技術の推進など、目標がいくつもあった。それをケネディは、「人間を月面に降ろし、無事、地球に帰還させる」という1つに絞った。
②究極の志から確固たる目標へと切り口を変えた
ケネディは、人を月面に降ろした後、地球まで連れ戻すという目標を今後10年で達成すると訴えた。つまり、達成期限と具体的な目標を掲げた。
③日々の業務と最終目標をつなぐ中間目標を設定した
宇宙飛行士を周回軌道に乗せるマーキュリー計画、宇宙船のドッキングを実現するジェミニ計画、そして、最終的に人を月面に降ろすアポロ計画。この3つの計画と目標を提示した。
④メタファー、アナロジー、ユニークなレトリックで目標が壮大であることを強調した
ここで使われたのは、言語学で「具体化した概念」と呼ばれるテクニックだ。具体的な行為(人を月面に降ろす)と抽象的な志(科学技術の振興)をつなぐ、つまり、抽象性と具体性を1つにまとめるものだ。
ケネディは、「宇宙があり、そこに我々は上っていく。月や惑星があり、そこに知識や平和の新たな希望がある」と語り、知識や探索などの抽象概念に具体的な場所を与えている。
この4ステップはすさまじいばかりの説得力を発揮した。彼の言葉により、NASA職員は、自分の仕事が究極の目標とどうつながっているのかを感じられるようになった。