2020年1月号掲載

米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く

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著者紹介

概要

トランプ vs. 習近平 ―― 。ニュースでは決して報じられない米中対立の真実を、中国研究の第一人者が明かす。トランプがファーウェイの禁輸制裁緩和に傾いた理由や、中国「一帯一路」構想に隠された“中華の知恵”。激しさを増す覇権争い、変動する東アジアの行方を見通し、二極化が進む世界で日本はどうすべきかを考察する。

要約

米中首脳会談の真実

 2019年10月1日、中国建国70周年記念の閲兵式とパレードが北京の天安門広場で行われた。

 パレードでは、毛沢東や鄧小平のみならず、元国家主席の江沢民や胡錦涛の巨大な肖像画までが登場、各肖像画の周りを参列者が歓声を上げながら行進した。天安門事件前後の指導者を除き、中国は決して前任者を否定しない。必ず礼賛する。

 この現象は、次の厳然たる事実を指し示している。すなわち、中国の目的は「中国共産党をいかにして讃え、いかにして維持していくか」という一点に絞られているということだ。

 民主的な普通選挙のない中国では、選挙に負けるという心配もなく、一党支配体制がどれだけ素晴らしいかを国民に植え付ければいいだけなので、国益に適う戦略を長期的に立てやすい。

 その視点で中国を取り巻く国際関係、特に米中関係を中心に掘り下げると、表面的には見えない、水面下の戦略が見えてくる ―― 。

トランプ「譲歩」の謎

 2019年6月29日と30日に大阪で開催されたG20サミット(主要20カ国・地域首脳会談)の最大の見どころは、その間に開催されることになっていた米中首脳会談だったと言っていい。トランプが、交渉次第では第4弾の対中追加関税を断行すると何度も言っていたからだ。

 しかし会談後、トランプの口から出た言葉は「対中追加関税第4弾の見送り」と中国通信機器大手「ファーウェイに対する禁輸緩和」だった。

 なぜ、トランプは譲歩をしたのか?

 ―― 習近平はトランプに、「ファーウェイに対する禁輸を解除しないと米中首脳会談には応じない」という前提条件を付けていました。その時点で、勝負はついていたのですよ。もう1つ、米議会公聴会に注目するといいでしょう。

 実は6月17日~25日、「第4弾対中関税制裁」と「ファーウェイに対する禁輸制裁」に関する公聴会が米議会で開かれていた。意見を発表した約320社の米関連企業の大半は、対中制裁に反対した。ファーウェイと取引をしている企業はとても多く、そのサプライチェーンを切断されることは米企業にとって致命的であると訴えたのだ。

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