2020年2月号掲載
国際社会を支配する地政学の思考法 歴史・情報・大衆を操作すれば他国を思い通りにできる
Original Title :Así se domina el mundo (2017年刊)
著者紹介
概要
地政学は、国の地理的位置や歴史と、政治現象との関係を研究する学問だ。だがグローバル時代の今日、「地球全体」を視野に入れる必要がある。そんな現代の地政学、そして“地政学的戦略”を説いた書。歴史上の出来事や最新の世界情勢を引きつつ、権力者が用いる様々な戦略を語る。著者は、元欧州合同軍防諜・治安部隊長官。
要約
世界とはどのようなものか
従来、地政学では、政治的な出来事は地理的位置や歴史との関係において解釈されてきた。
しかし、現代における地政学ではさらに広範で深い視点が求められる。地政学の“地”は、これまでは領土を指していたが、グローバル化と各国の相互依存の高まりを受けて、現在では「地球全体」を意味するようになった。世界の他の地域で起こっていることが、自国とは無関係であることなどほとんどないからである。
では、世界とはどのようなものなのか。
地政学の大原則は「偽善」
国際政治ほど、偽善的で残酷なものはない。各国は自国の利益だけを考えて政策を練り、それを実施する。だが、利害関係は、常に変化する。
国際領域においては、永続的な共通目的はなく、国同士を結びつける絆を保つのは難しい。利害が共通するように思われても、それは一時的なものだ。同盟や友好関係、そして敵対関係ですら常に矛盾をはらみ、驚くほどの速さで変わっていく。
これまでどの国も、自国の利益のために行動してきた。そういう状況は、これからも続くだろう。
影響力ゲーム
「強者は望むことを行い、弱者は強者の横暴に苦しむ」歴史家トゥーキュディデース
国家は、基本的に2つに分けられる。支配者国家と被支配者国家だ。支配国は、地域規模、または世界規模でその支配力を行使する。被支配国は直接的に支配され、様々な形(軍事、経済、文化等)で服従し、否応なしにその状態を受け入れる。
理由はどうあれ、自身が強大であると感じていない国々は、少なくとも理論上は安全と特権を保障してくれる強大国の傘下に入ろうとする。
争いごとは人間の本質
「人間であるがゆえに、人間たちは闘う」16世紀のザクセン選帝侯モーリッツ
モーリッツの言う通り、争いごとは人間の本質や社会の現実と不可分で、利害、認識、文化に違いがある限り避けることはできない。