2020年2月号掲載
私たちが、地球に住めなくなる前に 宇宙物理学者から見た人類の未来
Original Title :ON THE FUTURE
著者紹介
概要
今、世界の人口は76億人。それが、2050年には90億人になるという。食料は大丈夫か。地球温暖化の影響は。また、AI・バイオ技術などの進化は、暮らしに寄与するのか否か。未来に関する懸念の数々を、世界的な宇宙物理学者が、科学的な視点から考察。人類の明日に向けて考えるべき重要な問題が、わかりやすく示される。
要約
脅かされる生態系と臨界点
地球が生まれてから、45億年になる。だが、ある1つの種 ―― 人類が、この惑星の生物圏の運命を左右できるようになったのは、今世紀が初めてのことだ。
そして今後、人類がよほど幸運でない限り、地球環境の破壊は避けられない。それは、生態系にかけられる支えきれないほどの負荷のせいだ。
人間はどんどん増えており、その人間がますます資源を求めている。加えて、テクノロジーによって人間にできることがさらに増えた。
新しい科学によって開ける機会は大きいが、それによって人類の生存が危うくもなりかねない。
人口90億の世界と食・水・エネルギー
50年前、世界の人口は約35億人だった。現在では、およそ76億人と推定されている。しかし増加のペースは以前ほど速くない。実際、全世界で見て年間出生数がピークに達したのは数年前で、今では減少に転じている。
にもかかわらず、世界人口はまだ増えると予測され、2050年までには90億人前後になるという。これは発展途上国の大半の人がまだ若く、子供を持っていないためであり、加えて、これらの人々の寿命が延びることも見込まれるからだ。
人口90億の世界。それ自体は、必ずしも決定的な破滅を意味しない。現代の農業なら ―― 給水の必要が少ない作物に、遺伝子組み換え作物を組み合わせたりすることで ―― その数を支えられるだけの食料供給を可能にするだろう。
しかし、エネルギーには制約がある。加えて、一部の地域では、給水にも制限がかかるだろう。
1キロの小麦を栽培するのに必要な水は1500リットル、必要なエネルギーは数メガジュールだ。しかし、1キロの牛肉を得るには、その10倍の水と、20倍のエネルギーが必要になる。
今日、全世界のエネルギー産出量の30%、取水量の70%が食料生産に費やされている。
「地球の限界」の内側で
かつて、オランダ人化学者が、上層大気中のオゾンをフロンが破壊していることを明らかにした。