2020年4月号掲載

AIvs.民主主義 高度化する世論操作の深層

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著者紹介

概要

不正に入手したSNS上の個人情報をAIで解析し、選挙キャンペーンに利用する。そんな信じがたいことが、2016年の米大統領選で行われたとの報道がある。AIによる世論の誘導が、トランプ大統領の誕生を後押ししたと指摘されているが、果たしてAIはどれほどの影響力を持つのか。NHK取材班が、世論操作の深層に迫る。

要約

AIは誘導する

 2020年11月3日、米国ではトランプ政権2期目をかけた大統領選挙が行われる。

 その行方を読み解くためには、史上最大の番狂わせとも言える前回の選挙の陰で起きていた、ある事件に立ち戻らなければならない ―― 。

ケンブリッジ・アナリティカ

 2018年3月、フェイスブック(以下FB)が保有する大量の個人データが、トランプ陣営に利用されていたというニュースが世界を駆けめぐった。

 2016年の大統領選でトランプ陣営のキャンペーンを担っていた会社が、FBから不正に入手したデータを選挙に活用していたというのだ。

 その会社の名は、ケンブリッジ・アナリティカ(以下CA)。CAはFBから入手した8700万人分の個人データを解析し、SNSの政治広告の製作に利用していたのである。

 2020年の元旦から、そのCAの元社員ブリトニー・カイザー氏が関わるツイッターアカウントが、CAの内部資料10万ページを公開し始めた。

 資料によれば、CAが関与し、不正に入手された個人データが68カ国で世論操作に利用されていた可能性が指摘されている。研究者らは、これらの資料から「新たなプロパガンダ戦略」の一端を知ることができると注目している。

カギを握るマイクロターゲティング

 この新たなプロパガンダで利用されたのが、AI(人工知能)の技術だ。

 CAは、有権者の政治的傾向を割り出した上で、個々の有権者にカスタマイズする形で政治広告を製作していた。マイクロターゲティングとは、そうして作られた政治広告を、SNS上の何千万という有権者の中から数百という最少単位の人々に向けて効果的に送りつける方法である。

 人間では把握しきれない有権者それぞれの傾向を、AIが様々なパターンを機械学習することで正確に把握することができる。AIのアルゴリズムは、いつ、どのようなタイミングで広告を表示すれば最も効果が高いかまで計算していた。

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