2020年4月号掲載
BLITZSCALING 苦難を乗り越え、圧倒的な成果を出す武器を共有しよう
Original Title :BLITZSCALING
著者紹介
概要
急速に世界が変化し、先が読めない今日、重要なのはスピード。必要ならリスクを冒し、非常識な方法をとってこそ大きく成長できる。フェイスブックしかり、ネットフリックスしかり。書名の「ブリッツスケーリング」は、こうした成長速度を最重要視する戦略のこと。本書では、そのコンセプトと具体的な内容を詳しく紹介する。
要約
ブリッツスケーリングとは?
「ブリッツスケーリング」。この言葉はドイツ語のブリッツ(雷)から転じて、総力をあげて成長に集中する戦略を指す。企業が並外れた速度でスケールアップするためのフレームワークと手法だ。
スタートアップがある程度成功すると、キラープロダクトや大規模な市場、安定した流通などが必要なステージを迎える。つまり、スケールアップになることを狙わねばならない。この、スタートアップからスケールアップに至る最速の経路がブリッツスケーリングによる猛烈な成長だ。
アマゾンの急成長
例えば1990年代末のアマゾンの驚異的な成長は、ブリッツスケーリングの好例だ。1996年、株式上場前のアマゾンの書籍部門には151人の社員がおり、510万ドルの収入を得ていた。
3年後の1999年に上場したアマゾン・ドットコムは、社員数7600人に成長し、収入は16億4000万ドルに。わずか3年で、スタッフは50倍、収入は322倍になった。
伝統的な成長戦略との違い
ブリッツスケーリングは、単なる急成長とは異なる。将来を見通しにくい状況で、効率性よりスピードを優先する戦略全体を指す。
伝統的な成長戦略では、環境を確実に把握した上で、効率性を追求する。これは、安定した市場で成長を追求する場合には良い戦略だ。
一方、ブリッツスケーリングは全く違うアプローチだ。スピードを最優先し、効率を犠牲にする。
いわば、ブリッツスケーリングは全く予測できない未来に突進するような賭けだ。結果はとてつもない成長かもしれないし、大失敗かもしれない。
しかも、ブリッツスケーリングは実行が難しい。起業家は巨額の資金を外部から導入する必要がある。さらに悪いことに、スピードを優先するあまり、起業家はミスを犯しやすい。
こう説明すると、「誰がそんな危険なアプローチをとりたがるのだろう?」と思うかもしれない。
だが、これらの欠点をすべて考え合わせても、起業家やビジネスリーダーにとってブリッツスケーリングが唯一の成長の可能性である場合が多い。リスクを認識した上で採用すれば、他者とはケタ違いのスピードで成長できる。賭け金が大きく、競争が激した場合、ブリッツスケーリングは合理的であるだけでなく、最適の戦略となる。