2020年9月号掲載
経営の知的思考 直感で発想 論理で検証 哲学で跳躍
著者紹介
概要
新型コロナウイルスのショックで、世界中が混乱している。いまだ先行きが不透明な中、経営者に求められるのは“前例なき決断”だ。データや論理では詰め切れない中で決断しなければならない。そのために留意すべきことを、経営学の第一人者が説いた。不確実な未来に向け、跳躍するための「思考の筋道の基本」が示される。
要約
直感、論理、哲学、すべてを使う
経営の決断は、単にデータを集め、論理で検証して判断するというだけではなく、不確実な未来に向かって“跳躍”するということに本質がある。
まさに今、日本企業がしなければならないのは、コロナショックの巨大な不確実性の中での跳躍だ。待ったなしの前例なき決断を迫られている。
では、決断する際の「思考の筋道の基本」、それはどのようなものなのか ―― 。
決断 = 判断 + 跳躍
すべての決断の基本構造は似ている。それは、「発想し、論理的に検証し、最後に跳躍をする」という3ステップの構造である。
まず、どんな行動をとるべきかについての「発想」が生まれる。そして、その発想が適切かどうかを「検証」する。それから、検証の結果を見て、人は何らかの行動をとろうと選択の判断をする。
しかしそれは判断であって、まだ実行すると決めるわけではない。実行を開始すると心を決め、動き出すのが、「決断」というステップである。
決断という言葉のニュアンスには、判断の上にさらに思い切ること、あえていえば跳躍すること、が加わっているのである。
発想のベースは直感
第1ステップの発想とは、仮説を思いつくこと。「こんな工作機械があると、こんな部品をつくれるようになるのではないか」といった仮説である。
この発想というステップで、中心的役割を果たすのは「直感」だ。
といっても、あてずっぽうで考えていい、というわけではない。いい発想の前提として、基礎的な現実を把握するための情報収集は重要である。
だが、観察やデータ分析をいくら積み重ねても、それだけではいい発想は生まれない。そうした基礎情報の蓄積の上に、何かが気になる。その気になることについて考え続けていると、こんなことをしたらいいのではないか、と発想が生まれる。その瞬間は、直感であることが大半だ。