2020年11月号掲載

ウイルスの世紀 なぜ繰り返し出現するのか

ウイルスの世紀 なぜ繰り返し出現するのか ネット書店で購入
閉じる

ネット書店へのリンクにはアフィリエイトプログラムを利用しています。

※『TOPPOINT』にお申し込みいただき「月刊誌会員」にご登録いただくと、ご利用いただけます。

※最新号以前に掲載の要約をご覧いただくには、別途「月刊誌プラス会員」のお申し込みが必要です。

著者紹介

概要

20世紀後半以降、動物由来の新たなウイルスが続々と人間社会に現れている。今、世界を騒がせている新型コロナもその1つ。人間の活動範囲が広がり、野生動物に接触する機会が増えた現代では、今後も新たなウイルスは出現しうる。そう警告する専門家が、数々の新興ウイルスについて詳述し、ウイルスと社会の関係を俯瞰する。

要約

エマージングウイルスの系譜

 1980年、WHO(世界保健機関)は、天然痘の根絶を宣言した。

 当時、多くの細菌感染が抗生物質で治療可能になっていた。天然痘と並ぶ最も重大なウイルス感染症である麻疹とポリオにも、根絶の見通しが出てきていた。人類は感染症を克服できる。多くの人々がそう考えた、楽観の時代であった。

 しかし、現実は違った。1981年にエイズが出現し、全世界に広がっていった。人々は感染症の克服が幻想にすぎなかったことに気付いた。

エマージング感染症

 ヒトの間で広がる伝染病の中には、ヒトに由来する病気だけでなく、動物に由来する病気も数多くある。これを「動物由来感染症」といい、現在までに200種類以上が明らかになっている。

 動物由来感染症は古くからあり、近年、その一部が「エマージング感染症(新興感染症)」と呼ばれるようになった。まず、1981年にエイズが出現した。それと前後する形で、エボラ出血熱、ハンタウイルス肺症候群など、これまでになかった新しい感染症が次々と出現した。

 こうしたウイルスによる感染症に、細菌感染症である新型コレラ菌O139、腸管出血性大腸菌O157などまで含めれば、その数はさらに増す。

 上記のような20世紀後半以降に現れたウイルスを「エマージングウイルス」と呼ぶ。エマージングウイルスによる感染症は、高い致死率や激しい症状などから世界に衝撃を与えている。

ラッサ熱

 1969年、ナイジェリアの小さな村ラッサで、看護師が原因不明の熱病で重体に陥った。その後、西アフリカの離れた4カ所の地域でも、同様の熱病が流行し、その致死率は36~67%と高かった。

 ラッサ熱の発生は西アフリカという熱帯地域に集中している。だが、国際交流が日常化した今日、ウイルスも限られた地域に留まっていない。

 1976年、西アフリカで平和部隊の隊員として働いていた米国人女性が、頭痛や吐き気などを感じた。医師がラッサ熱を疑い、女性の血清を米国CDC(疾病制圧予防センター)に送った。一方、女性は帰国し、ワシントンの病院に入院した。

この本の要約を読んだ方は、
他にこんな本にも興味を持たれています。

データでわかる 2030年 地球のすがた

夫馬賢治 日経BP・日本経済新聞出版本部(日経プレミアシリーズ)

地球に住めなくなる日 「気候崩壊」の避けられない真実

デイビッド・ウォレス・ウェルズ NHK出版

半導体戦争 ――世界最重要テクノロジーをめぐる国家間の攻防

クリス・ミラー ダイヤモンド社

未来探究2050 東大30人の知性が読み解く世界

東京大学未来ビジョン研究センター(編) 日経BP・日本経済新聞出版本部