2020年12月号掲載

モビリティ・エコノミクス ブロックチェーンが拓く新たな経済圏

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著者紹介

概要

増産しても利益が減る。そんな「規模の不経済性」に陥った自動車産業が生き残るカギは、ブロックチェーンにある。車が人やモノに加えデータまで運ぶようになった今日、持続可能なモビリティ社会を実現するにはこの技術が欠かせない。自動車産業の内情をよく知る著者らが最先端の事例を交え、ブロックチェーンの可能性を説く。

要約

規模の不経済性に陥る自動車メーカー

 ブロックチェーン ―― 。それは、取引データを多くのコンピューターが共有し、検証し合って正しい記録を蓄積する技術である。解読するのが極めて難しい暗号技術を利用している。

 データが集まったブロック(塊)が、チェーン(鎖)のように連なっているので、ブロックチェーンと名付けられた。

 このような形でデータの記録を蓄積していると、あるデータが書き換えられた場合、そのデータを含むブロックが後からつながる全ブロックに影響を及ぼす。その影響を排除するには、膨大なコストをかけて難解な暗号を解く必要がある。そうならないよう、改ざんができないような方法でブロックチェーンは作られている。事実上、改ざんが不可能、というのがこの技術の重要な特長だ。

 また、管理者がいない分散型ネットワークとして機能する、という特性もある。

 これらの特長を活かすことが様々な効果をもたらし、社会や産業のデジタルトランスフォーメーション(DX:デジタル技術を利用した変革)や、新しいビジネスの創造につながる。

 ブロックチェーンという新しい技術・概念は、現在も猛スピードで変化している。そして、その発展の舞台は、グローバルなスケールで様々な産業に拡がっている。中でも、自動車産業におけるブロックチェーンへの注目度は極めて高い。

世界の自動車生産台数はもう増えない

 「世界の自動車生産は、ピークを越えたかもしれない」。これは、2020年1月29日、世界最大の自動車部品メーカーである独ロバート・ボッシュのCEOが述べた言葉である。

 事実、2019年以降、大手自動車メーカーによる生産能力の削減計画が相次いでいる。例えば、米ゼネラル・モーターズは北米にある4工場のうち、3工場を2019年中に停止させたが、近い将来にこれらは閉鎖される。

規模の不経済性が背景に

 規模の不経済性とは、ある一定の生産数量を超えると、生産規模を増やすことにより収益性が悪化し、ゆくゆくは減益に陥ってしまう状況を指す。

 その背景にあるのは、品質関連費用、販売奨励金、研究開発費といった取引コストの増大だ。ある生産規模を境に、このコストの増加分が増産による固定費の拡散効果を上回ってしまう。そして、生産量1台当たりの利益が減少し始めるのだ。

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