2021年3月号掲載
2021年以後の世界秩序 国際情勢を読む20のアングル
著者紹介
概要
2016年の大統領選に勝利し、20年に敗れたトランプ。彼を巡る混乱は、米国の衰退を示すものといえるが、世界もまた、混沌へと向かいつつある。「力の均衡点はアジアにシフト」「『より巧妙なポピュリスト』を警戒せよ」「コロナで国際問題が先鋭化」…。従来のパラダイムでは計り得ない世界の動きを、様々な視点から見通す。
要約
世界の力の均衡点はアジアにシフト
世界は今、これまでの常識が変わる大きなパラダイム・シフトの時代にある ―― 。
世界の東洋化=イースタニゼーション
現在の世界の歴史的な潮流を一言でいえば、「イースタニゼーション」(東洋化)となる。
過去50年を見ると、米欧のグローバル経済への影響力は着実に低下している。
そして、世界第2位の経済大国となった中国の台頭が示すように、経済・政治・外交の中心が、米欧からアジアにシフトしている。
中国の経済的強さは、軍事力を支え、今や米中新冷戦の様相をみせている。米国では、このイースタニゼーションにどう対応するのかが、国家戦略上の最大の議論となっている。
「一帯一路」に対抗する「インド太平洋戦略」
2019年6月、米国防総省は「インド太平洋戦略報告書」を発表した。中国の「一帯一路」構想などのインド・太平洋地域への軍事・政治・経済的な影響力拡大に対抗して、既存の秩序とルールを維持するために、米国が地域の主要な国々と積極的に協力する方針を示したものだ。
冷戦期以降の米国のアジアでの安全保障戦略は、「ハブ・アンド・スポーク」と形容される複数の地域の2国間同盟を中心におき、地域の経済協力や統合については冷淡な態度をとってきた。
それが現在、地域のネットワーク化を支援する方向に大きく転換した。中国の圧倒的な地域への影響力に対して、自国の軍事力、経済力だけでは対抗しきれないと考えている証拠だ。
このインド太平洋戦略構想は、同盟国とパートナー国とともに地域の既存の秩序と経済発展を支持して、中国に対抗するという考え方だ。
ジョー・バイデン新大統領は、中国の課題に対処する効果的な方法は同盟国やパートナーとの共同戦線をまとめることだ、と明確に述べている。
従って、バイデン政権でも、対中牽制のための「インド・太平洋地域」でのネットワーク形成の方向性は継続するだろう。