2021年3月号掲載

リ・イノベーション 視点転換の経営 知識・資源の再起動

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著者紹介

概要

既存の知識や資源を従来とは違う視点で読み替え、イノベーションをやり直す。この「リ・イノベーション」という新たな価値創造の概念を論じた書だ。オープン・イノベーションやダイバーシティ経営などを、知識・資源をとらえ直すための戦略活動と位置付け、眠っている価値を引き出し、リ・イノベーションを実現する道筋を示す。

要約

「リ・イノベーション」という視点

 イノベーションとは、新しい製品・サービス、新しい事業システムなどの開発を通じて、社会的・経済的価値を創造していくプロセスを指す。

 このようなイノベーションについては、これまで多くの研究や経験が積み重ねられてきたが、ある重要な視点が見落とされていた。それが、「リ・イノベーション」という視点である。

リ・イノベーションとは何か

 リ・イノベーションとは、「イノベーションをやり直す」という意味である。

 新しい何かを生み出すという意味のイノベーションではなく、すでに存在している知識・資源や製品・サービス等を改めてとらえ直すことで新たな価値を見いだし、イノベーションを再起動させていくことを指す。

様々なリ・イノベーション

 では、それはどのようにすればよいのか。

・技術の読み替え

 企業が持つ知識・資源の1つとして、技術がある。技術はイノベーションの重要な源泉だが、そのすべてが有効に活用されているわけではない。そうした技術を新しい視点から読み替えることで、イノベーションを再起動することができる。

 例えば、インクジェット・プリンタ。この製品を手掛けるキヤノンでは、インクジェット技術が開発された当初、印字のきれいさやスピードの点で、当時市場化されていたレーザービーム・プリンタには到底かなわないとみなされていた。

 だが、同社はこの技術を多様な角度から読み替えることで、小型化やカラー化という新たな価値を見いだした。その結果、小型プリンタやカラープリンタ、さらに複写機のエンジンとしても利用され、同社の成長を支える一大事業に発展した。

・製品・サービスのとらえ直し

 例えば、大塚製薬のポカリスエット。もともと日本においてスポーツ後の喉の渇きを癒やす飲料として普及していたが、同社はそれを東南アジア、特にインドネシアに展開するにあたって、その意味付けを大きくとらえ直した。

 熱帯の気候下では、一般の人はスポーツをして汗を流そうとはしない。そこで新たに注目したのが、インドネシアの風土病であるデング熱による脱水症状や、人口の9割近くを占めるイスラム教徒の戒律の1つである断食の際の水分補給だ。ポカリスエットは、そうした新しい視点から価値をとらえ直すことで、同国で大きな市場を獲得できた。

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