2021年7月号掲載
新型格差社会
- 著者
- 出版社
- 発行日2021年4月30日
- 定価825円
- ページ数195ページ
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著者紹介
概要
コロナ禍は、日本社会の格差を顕わにした。それは経済のみならず、家族、教育、仕事などの面でも拡大している。小学4年生で人生ルートが決まる、働く業界で貧富の差は分かれる…。こうした格差が長期化し、固定化されれば、「階級社会」に陥りかねない。本書はこう指摘し、家族社会学の観点から日本の現状を明らかにする。
要約
家族格差~戦後型家族の限界
「格差社会」という言葉がメディアに登場するようになってから、15年ほどの月日が流れた。
この言葉は多くの場合、経済的な問題について語られてきた。だが、日本に広がり続けていた格差は経済面だけではない。「家族」「仕事」「教育」など、社会の礎を築く要素にも広がっていた。
そして、コロナ禍がこれまで隠されていたこうした格差を可視化させる契機となった ―― 。
若年女性の自殺者数増加
新型コロナウイルスのパンデミックにより、2020年7月頃から自殺者の数が増加している。
中でも目立つのが、10~30代の若年女性の自殺者数の増加である。男性の自殺者数は、8月においては前年の10%増だったが、女性全体では45%も増加している。さらに20歳未満の女性に限れば、3.6倍にも増えているのだ。
もともと経済的に弱い立場におかれていた若年女性が、コロナによって収入減や失職に見舞われたことが、自殺者の増加につながったと考えられる。
ますます加速する少子化
コロナがもたらした社会変化は、それだけではない。「結婚数と出産数の減少」も起きている。
2020年の婚姻数は、2019年に比べて12.7%も減少している。原因の1つとして、コロナ禍で収入が減少し、結婚後の経済的生活に見通しが立たなくなったカップルが増えている可能性がある。
さらに今後は、コロナ禍の生活ルールで「結婚に至る出会いが減少する」ことにより、結婚の減少に拍車がかかると予想される。
また、少子化は、従来から社会のトレンドだったが、その傾向をコロナ禍が加速させた。2020年の出産は、統計上最低だった2019年の出産数を約2万5000人下回っている。そして、2021年の出生数はさらに減ると予想されている。
理由はいくつか考えられる。1つは、妊娠中にコロナに感染したくないという、健康上のリスクを考えて妊娠を避けたこと。その他にも、コロナによる世帯収入の減少が要因となり、妊娠を先延ばしにした人も多数いると予想される。