2021年7月号掲載
診断名サイコパス 身近にひそむ異常人格者たち
Original Title :WITHOUT CONSCIENCE
- 著者
- 出版社
- 発行日2000年8月15日
- 定価880円
- ページ数339ページ
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著者紹介
概要
サイコパス(精神病質者)―― 。良心がなく、極端に自己中心的。平気で社会の規範を犯し、思うままに人を操る。恐ろしいことに、そうした異常人格者の多くは我々の身近に潜んでいる。いったい彼らは何者なのか。米国の心理学者が、多数の実例をひきつつその特性や行動を詳述。サイコパスの本質に迫った精神分析の書である。
要約
サイコパスとは何者か?
診断名、精神病質者(サイコパス) ―― 。この種の人間の驚くべき特徴は、ものの見事に良心が欠けているということだ。
彼らの多くは、犯罪者として刑務所内にいる。
例えば、エド・ゲイン(1906~84年)。彼は57年に金物店の女主人を射殺。保安官がゲイン宅を訪れると、人間の皮膚を張った太鼓、皮膚で作られた衣服、頭蓋骨で作った石鹸皿などが見つかった。冷蔵庫には人体の様々な部位が凍らせてあり、それらは約15人の女性のものと推定された。
この事件は、ヒッチコックのホラー映画『サイコ』や、トマス・ハリスの小説『羊たちの沈黙』のモデルとなっている。
サイコパスはどこにでもいる
サイコパスの多くは刑務所内にいるが、社会に出ている者もまた多い。例えば、北米には少なくとも200万人のサイコパスがいる。ニューヨーク市には10万人のサイコパスがいる。しかも、これは控えめな数字だ。彼らは事実上、すべての人の手の触れるところにいるのだ。
サイコパスの大部分は、殺人を犯すことなく、自分たちの業を押しつけてくる。凶暴でマスコミをにぎわせるような行為にばかり目を奪われていると、もっと大きな展望を見失うおそれがある。人は殺さないが、私たちの日常生活に衝撃を与えかねないサイコパスのことを。私たちは、殺人鬼よりも、なめらかな舌をもった詐欺師に、はるかに人生をふいにされてしまいがちなのだ。
なぜ、サイコパスになるのか
サイコパスの犯罪に関する記録を読めば、彼らがごく普通の隣人や職場の同僚であったりすることがわかる。こうした記録は、彼らには他人の痛みや苦しみを思いやる能力が完全に欠落しているのではないか、というテーマを浮かび上がらせる。
そして、どうしてこんな欠落が起こるのかを説明しようとすると、まず家族環境に目を向けることになるのだが、そこに答えはほとんどない。何人かのサイコパスの子供時代が物質的にも情緒的にも恵まれなかったことは事実だが、温かく慈しみにあふれた家庭に育ったのに、サイコパスである場合もある。また、悲惨な子供時代を過ごした人が、全員サイコパスや殺人鬼になるわけでもない。
精神病質が顕在化する背景には、もっと深い、もっとわかりにくい事情がある。
サイコパスの行動は選択の結果
このテーマを取り巻く混乱と不可解さは、精神病質(サイコパシー)という言葉そのものからまず派生する。文字づらでは、これは“精神病”(サイキは「精神」、パソスは「病気」の意味)であり、辞書によってはいまだにそのような意味として掲載されている。
混乱は、マスコミがこの言葉を“狂気”とか“異常”という言葉と同義に使用することから起こる。例えば、「彼女を殺した男は“異常者”(サイコ)にまちがいない」といったように。