2021年11月号掲載
BCG「最強」を超える戦略 不確実な時代を勝ち抜く9原則
Original Title :BEYOND GREAT:Nine Strategies for Thriving in an Era of Social Tension, Economic Nationalism, and Technological Revolution
著者紹介
概要
資本主義がもたらす気候変動リスクと格差拡大、経済ナショナリズムの激化、テクノロジー革命…。世界の経営環境が大きく変わる中、企業は「これまで“最強(グレート)”とされていた戦略」だけでは生き残れない。こう指摘するボストン コンサルティング グループのコンサルタントが、変化の時代で勝つための9つの戦略を提示する。
要約
世界を変えている「3つの力」
2016年、世界経済フォーラムで「グローバリゼーションは死んだ」という指摘がなされた。
当時、世界中の多くの経営幹部がまだグローバリゼーションとグローバル成長について強気の見方をしていた中で、これは衝撃的な主張だった。
興味をそそられた私たちは研究調査を開始した。そこでわかったのは、グローバリゼーションは死んだわけでも、死にかけているわけでもないことだ。国境を越えたデータの流通、海外旅行者数など、グローバル統合は実際には加速していた。
一方で、ゲームのルールは根本的に変化し、脅威だけでなく新しい機会をも生み出していた。一部のグローバル企業は成功していたが、それはリーダーたちがそうした機会を見逃さず、組織の適応やレジリエンス(回復力)の向上を推進していたからだ。その他の企業は受動的で、以前ほど有効ではない従来の戦略にしがみついていた。
この調査結果をもとに突き止めたのが、グローバルビジネスの本質を変容させた3つの力である。
①自然環境保全と資本主義への不満
第1の力は、関連性のある2つの変化が引き金となって生じる社会的緊張である。
1つは、自然界の生態系にかかる負荷の増大。もう1つは、資本主義に対する不満の高まりと、その結果としての不平等だ。
工業化は自然界と天然資源をひどく枯渇させ、気候変動や汚染の蔓延を引き起こしてきた。市民は長い間、環境保全は政府の役割だと考えてきたが、今では企業にも行動するように求めている。
加えて、多くの国で格差が拡大していることにより、資本主義に対する懐疑論が広まっている。顧客や従業員からは、企業が明白な社会的便益をもたらすことを求める声が高まっている。
②経済ナショナリズムの激化
第2の力は、経済ナショナリズムの高まりと、米国の覇権の後退が進んでいることだ。
米国は依然として経済、軍事、技術の面で強い力を持っているものの、世界全体のGDPに占める中国の割合は2000年以降で3倍になった。米中間の競争の激化は、両国の経済だけでなく世界にも影響を及ぼしている。