2022年3月号掲載

教養としての仏教思想史

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著者紹介

概要

約2500年前、北インドの「釈迦族」の王子、ゴータマ・シッダッタによって開かれた仏教。この教えの変遷を、歴史の流れに沿ってわかりやすく説く。成立から、部派仏教への分裂、東アジアへの広がり、そして現在の日本の仏教に至るまで。世界三大宗教の1つである、仏教の全体像を俯瞰できる。著者は、東大名誉教授の住職。

要約

仏教の成立

 仏教は、今から約2500年前、北インド(現在のネパール)にあった「釈迦族」の国の王子として生まれたゴータマ・シッダッタによって開かれた教えである。

 開祖ゴータマは、「お釈迦さま」「釈尊」(釈迦族の尊者の意)などと呼ばれることが多いが、これはその出身部族に由来する呼称である。

開祖ゴータマ

 ゴータマの生活は一見、豊かで幸せに満ちたものであった。しかし、心には、深い悩みが芽生えていた。ゴータマは後年、自らの青年時代を回想して、次のように語っている。

 ―― 私は裕福で快い毎日を過ごしていたが、次のような思いが起こった。人は老いるのを免れないのに、老い衰えた他人を見て、悩み、嫌がる。私もまた、老いていくことを免れない。それなのに、老い衰えた他人を見て、〈このことは、私にふさわしくない〉といって、悩み、嫌がるだろう。

 この後さらに、「自ら病むもの」を洞察することによって健康への意気が失われたこと、また、「自ら死ぬもの」を洞察することによって生存の意気が失われたことを述べている。

 この一節は、出家へと心を傾斜させていく青年ゴータマの深い想いの一端を伝えている。

ゴータマの出家

 ゴータマが出家したのは29歳の時である。出家とは、家族・友人・職務など、世俗的な縁をすべて断ち切り、ひたすら真理・真実を究明し、揺るぎない安心を得ようとする生活に入ることだ。

 ゴータマは、まず瞑想の達人である2人の仙人を訪ねた。だが、瞑想の境地に満足できなかった。次に、当時、道を求める人たちの間で修行法として重視されていた様々な苦行(断食など)を実習していった。苦行は6年間に及んだが、心の平静は得られず、ゴータマはついに苦行を放棄した。

「縁起」の観察

 ゴータマが「何を」悟ったのかということについては、一般には、それは「縁起」だといわれる。

 だが、仏典に明確な説示はない。例えば、『マハーヴァッガ』(漢訳名は「大品」)には、ゴータマが悟りを開き、解脱の楽しみを享けながら坐っていた時に思惟した内容として、縁起の観察が出てくるのであって、縁起を悟ったのではない。最初期の仏典編纂者たちは、おそらくゴータマの悟りそのものには言及できなかったのだろう。

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