2022年5月号掲載
米中対立の先に待つもの グレート・リセットに備えよ
- 著者
- 出版社
- 発行日2022年2月16日
- 定価1,980円
- ページ数331ページ
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著者紹介
概要
米中新冷戦が始まった! コロナ・パンデミックを機に、両国が対立を深めている。なぜか。中国における変化、思惑、新たな方針を読み解く。著者は言う ―― 中国は、長期戦に持ち込めば優位に立てると楽観している。だが、貧富の差、過剰債務などの難問を抱える自分も躓き、「米中共倒れ」になるリスクを見落としている、と。
要約
対米長期持久戦に向かう中国
米国の対中政策は、過去5年で劇的に変化した。特に、2020年にコロナ・パンデミックが起きるや否や、米中対立が一気にエスカレートした。
パンデミックの拡大に慌てたトランプ前大統領は「責任は中国にある」という「チャイナ・ウイルス」説を流した。また、以前から燻っていた新疆ウイグル自治区での人権侵害批判に火が点いた。
対米持久戦ヘ ―― 「時間は中国に味方する」
中国の対米政策も、コロナ・パンデミックを境に大きく転換した。新しい方針は、米国と「長期持久戦」を闘っていく、というものだ。
転換の理由は、2つある。
・「米中関係の回復は望めそうにない」と、見切りをつけたこと
中国では2018年頃から「日本の例を見てもわかるように、米国は二番手の国がGDPで米国の6割に達すると、その国を潰しにかかる経験則がある」という言説が流布していた。
そして2019年、米国が中国のファーウェイ社を抹殺せんばかりに政策を強化するのを見て、中国人は「経験則は正しい」と確信を深めた。
・2020年を境に、中国人の対米観にも大きな変化が生まれたこと
かつて米国は仰ぎ見るような存在だったが、中国の経済発展につれて「中国の方が優れている」という声も上がるようになった。特に、コロナ・パンデミックで米国人が数十万人も亡くなったと聞き、中国人は「それでも先進国か」とあきれた。
2020年の大統領選挙の後、敗北を認めないトランプ前大統領に煽動された群衆が議事堂襲撃事件を引き起こした。これを聞き、「西側民主主義体制は破綻したのも同然だ」という思いを強めた。
こうしたことから、「米国は衰退する運命だ、だから持久戦をやれば、時間は中国に味方する」という楽観が生まれた。今すぐ米国と殴り合いをしても勝ち目はないから、当面の主眼は「米国の圧力に屈しない」ことに置かれるが、元の米中関係に戻りたいという意欲は失せた。
時間は中国に味方するのか
中国は、米国と持久戦で戦えば、時間は中国に味方すると楽観している。しかし、自分も躓いて「米中共倒れ」になるリスクを見落としている。