2022年6月号掲載
ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略 世界はどう変わるのか
- 著者
- 出版社
- 発行日2022年4月28日
- 定価1,078円
- ページ数222ページ
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著者紹介
概要
ロシアによるウクライナ侵攻は、中露の蜜月関係に変化をもたらした。中国は侵攻に賛同せず、プーチンに「話し合いによる問題解決を」と求める。一方で、徹底して経済的支援を行うという「軍冷経熱」戦略をとっている。この戦略の裏にはどのような狙いがあるのか? 習近平の思惑を、中国問題に詳しい遠藤誉氏が読み解く。
要約
中露間に隙間風
ロシアによるウクライナ軍事侵攻。これによって、中国とロシアの蜜月関係にヒビが入り始めた。
ウクライナの惨状を繰り返し報道する中国
中国の中央テレビ局CCTV–4(国際チャンネル)のニュースは、ウクライナの街の惨状と庶民の嘆きを大きく扱い、毎日のようにゼレンスキー大統領の悲痛な呼びかけを取り上げている。一方、プーチン大統領の顔が映ることはめったにない。
これは明らかに「中国はウクライナの側にいる」ことを暗示している。ロシアの「軍事的侵攻は認められない」と言いたいが、言えない。その代わりに中国は、「あくまでも話し合いによる問題解決を!」と言い続けている。
中国とウクライナは友好国
そもそも、中国とウクライナは、旧ソ連が崩壊した時点からの「大の仲良し」だ。中国は旧ソ連が崩壊するのを待っていたかのように、ウクライナと1992年に国交を樹立させた。
以来、両国の親密度は増している。2021年の中国の対ウクライナ輸出額は前年比36.8%増で、輸入額25.2%増と、輸出、輸入ともに過去最高となった。また、2020年の両国間の貿易額は国交正常化後30年間で60倍以上に増えている。
中国とウクライナの親密度は経済においてのみではない。中国「ご自慢」の空母第1号「遼寧」は、ウクライナから廉価で購入したものだ。
ソ連崩壊後、ウクライナにおいて世界トップクラスのミサイルや空母の生産に携わっていたハイレベル技術者の多くは、中国に高給で雇用されて、同国のミサイル開発や空母建造に貢献した。その結果、中国の軍事力はアメリカのペンタゴンが「ミサイルと造船に関してはアメリカを抜いている」と報告書に書くほどまでに至っている。
そのウクライナを、ロシアが侵攻することに中国が賛成するはずはないのだ。
習近平が重視する「一帯一路」経済構想
習近平は米中覇権競争の中で、アメリカに潰されないためには「経済」で西側諸国と結び付く以外にないという国家戦略で動いている。巨大経済構想「一帯一路」を中核に据え、経済を発展させることによって西側諸国を惹きつけ、中国に反抗できないようにしてアメリカに対抗しようというのが基本方針なのだ。
2022年2月6日現在、中国は148カ国および32の国際機関と、200以上の「一帯一路」協力文書に署名している。EU(欧州連合)は27カ国あるが、その内の18カ国は「一帯一路」加盟国で、さらにその内の15カ国がNATO加盟国である。
だから、「NATOに加盟するな」という理由でウクライナに軍事侵攻しているプーチンの行動など、絶対に賛同するわけにはいかないのだ。