2022年6月号掲載
プーチン幻想 「ロシアの正体」と日本の危機
- 著者
- 出版社
- 発行日2019年3月29日
- 定価968円
- ページ数259ページ
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著者紹介
概要
柔道を愛するロシアのプーチン大統領は、「反中親日」で、脅威ではない ―― 。だが、こうした見方は“幻想”だと断言、彼の本性とロシアの正体を暴く。対テロ戦争を煽動し支持率を高める、言論の自由を奪う、中国に依存する体制づくりなど、その戦略の数々を明らかにし、日本人に警鐘を鳴らす。著者は、日本在住のウクライナ人。
要約
プーチン体制はいかにして出来たのか
日本人はロシアのウラジーミル・プーチン大統領について誤解している。例えば、柔道を習っており、日本の伝統文化を理解し、親日だとされる。
これは誤解というより、妄想に近い幻想である。
プーチンはどのようにして大統領になったか
エリツィン体制末期、ロシアでは汚職が蔓延し、1998年の経済危機で国民生活は困窮を極めた。
そんな中、2000年の大統領選挙で、ロシア共産党が勝利しそうであった。共産党は企業の国営化や、エリツィンを支える新興財閥のオリガルヒが不当に得た財産の没収を主張していたからだ。
共産党の勝利を恐れたエリツィン大統領やオリガルヒは、FSB(ロシア連邦保安庁)に頼った。
FSBの前身はKGB(ソ連国家保安委員会)で、プーチンはKGBの出身だ。ソ連の国家保安を担う組織には、治安維持や諜報活動など表の任務以外に、対外謀略、政治的暗殺など裏の任務がある。目的達成のためなら、いかなる手段でも使う。
エリツィンは、当時、FSB長官を務めていたプーチンを首相に任命した。事実上の後継者指名だ。首相となったプーチンは全くの無名で、支持率はほぼゼロ。この状況では、選挙に勝てない。そこで、FSBは得意の謀略を実行することにした。
「対テロ」戦争を煽動して世論を集団ヒステリーに
1999年9月、ロシアの4カ所でマンションが爆破され、307人が死亡した。ロシア政府はすぐチェチェン系テロリストによるテロ攻撃だと発表。ロシアメディアは一斉にテロに対する恐怖を誘導し、世論は集団ヒステリーの状態になった。
この時、プーチンが国民をテロリストから守る「強いリーダーシップを発揮できる指導者」としてメディアに登場した。そしてロシア軍がチェチェン共和国へ攻め入ると、彼の支持率が上がった。
この民間マンションの爆破はFSBの謀略だったのではないか、という疑いがある。
例えば、9月13日にドゥーマ(国会の下院)の議長は会議でこう発言した。