2022年6月号掲載
危険人物をリーダーに選ばないためにできること
Original Title :Why We Elect Narcissists and Sociopaths ― And How We Can Stop!
著者紹介
概要
近年、世界では、ポピュリストや独裁者など、「対立」を煽る政治家が目につく。彼らは、人々の恐怖や怒りなどの感情を活用し、社会を分断して人々を支配する。一見有能で魅力的に見えるが、危険な人間なのだ。被害を避けるには、その正体を知る必要がある。本書は、こうした“対立屋”のパーソナリティを徹底解剖し、提示する。
要約
「対立屋」のパーソナリティ
私はナルシスト(自己愛性)やソシオパス(反社会性)などのパーソナリティ障害について学び、セラピストとして働いた後、弁護士になった。
弁護士になると、すぐにパーソナリティ障害が多くの法的な争いの原因であることに気づいた。つまり、対立性の高い法的な争いは、偶然起こるものではなく、「対立を煽るパーソナリティ」を持つ人々(対立屋)が原因となっている。
また近年、世界中でポピュリズムや独裁政権の芽が出てきている。そうした政治家の多くに、対立屋のパーソナリティが見られる。
パーソナリティの力
1人の政治家のパーソナリティが、どれほど深刻な問題になりうるのか。歴史家F・H・ヒンズリーはこう書いた。
「歴史家は、当然ながらほとんど誰もが…第二次世界大戦はアドルフ・ヒトラーのパーソナリティと彼が掲げた目標によるものだと考えている」
また、スターリンと、彼がロシアやウクライナで行った大量虐殺についても、同じような結論が出ている。スターリンが強制した集団農場化によって人為的な飢饉が生じ、400万人以上のウクライナ人と、それ以上のロシア人が死に至った。
毛沢東も、同じような集団農場化を強制した。彼はそれを「大躍進政策」と呼んだが、飢饉を引き起こし、2000万~3000万の人民を殺した。
対立を煽るパーソナリティとは
私たちが普段どのように考え、感じ、行動するか。それが、私たち1人1人のパーソナリティだ。
たいていの人は、揉め事に巻き込まれるとそれを解決しようとするが、対立を煽るパーソナリティの持ち主は違う。私は何百という揉め事を調べている最中に何度も目にしたが、彼らはあらゆる関係は本質的に敵対的なものだと考える。彼らは絶えず自分は誰かの敵とみなされ、脅かされていると感じ、しばしば極めて敵対的な対応をする。
その結果、彼らは次から次へと不要な対立を生んでいく。対立を煽るパーソナリティの持ち主は、強烈な衝動に従って、自分が敵とみなした相手を排除し、破滅させようとする。
彼らは皆、同じような言動パターンを共有している。その行動には、大きく4つの特徴がある。