2022年8月号掲載
人口大逆転 高齢化、インフレの再来、不平等の縮小
Original Title :The Great Demographic Reversal:Ageing Societies, Waning Inequality, and an Inflation Revival (2020年刊)
- 著者
- 出版社
- 発行日2022年5月19日
- 定価3,300円
- ページ数373ページ
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著者紹介
概要
1990年頃からの中国の台頭、ソ連崩壊に伴う東欧の世界経済への再統合で、世界の労働力は増大し、国家間の所得格差は改善した。だが、高齢者の増加により、今後、世界の人口構成は劇変し、グローバル化も減速する。世界経済の未来はどうなるのか? 過去30年と今後30年における世界経済の長期トレンドを分析し、警告を発する。
要約
過去30年間のトレンド
中国の台頭と世界の人口構成。これらが、過去30年にわたり、世界において「理想的な経済状況」を作り上げてきた。
だが、未来は過去とはまったく違った状況になるだろう。我々は今、その転換点に位置している。
今後、世界の人口動態の激変により、過去数十年にわたって作り出されてきた経済トレンドが劇的な大逆転を迎えることになる。その「人口大逆転」の影響は、金融、医療、年金、そして金融・財政政策の分野にわたって広がっていくだろう。
まず、過去30年間を振り返ってみよう。
人口構成の理想的な状況
過去数十年間における経済状況を作り上げた基本的要因の1つは、中国の台頭である。
1980年代、最高指導者・鄧小平は「中国の特色ある社会主義」というスローガンの下、社会主義思想を市場経済と融合させた。そして2001年、中国は世界貿易機構(WTO)に加盟、グローバルな製造業の生産網に統合された。
また、中国の労働年齢人口(15~64歳)は、1990年から2017年にかけて2億4000万人以上増加した。これは、欧米の合計労働年齢人口の増加を4倍以上も上回った。
さらに、世界の労働供給の増大に勢いをつけた出来事があった。それは、ソ連の崩壊によって、バルト三国、ポーランド、ブルガリアなど、東欧全体が世界貿易システムに組み入れられたことだ。
これら2つの出来事、すなわち中国の台頭と東欧の世界貿易システムへの復帰は、利用可能な労働力に巨大な供給ショックをもたらした。
先進国における良好な人口構成
世界経済への労働供給量は、先進国における人口構成の2つの変化によりさらに押し上げられた。
- ・「依存人口比率」の持続的な低下。すなわち依存人口(0~14歳と65歳以上の合計)に比較して、労働年齢人口が増大したこと。
- ・労働年齢人口に占める賃金を受け取って働く女性の割合の増加。
これら2つの要因が、中国の台頭、東欧の世界貿易システムへの再統合などの要因と組み合わさることによって、歴史上かつて見たことのない巨大な労働供給ショックが形成された。世界の先進国貿易システムにおける労働力の供給量は、1991~2018年の間に、2倍以上も増加したのである。