2022年9月号掲載
「カルチャー」を経営のど真ん中に据える 「現場からの風土改革」で組織を再生させる処方箋
著者紹介
概要
不祥事が止まない、現場に活力がない、上意下達が横行…。今、日本企業に「活力枯渇病」が蔓延している。元凶は“組織風土の劣化”。これを克服するには、良質な“カルチャー”を築くことが必要だ。現場が主体的に、やる気に満ちて働く ―― そんな組織に再生させるヒントを、『現場力を鍛える』の著者・遠藤功氏が提示する。
要約
日本企業が低迷する本当の理由
近年、日本を代表するような大企業で不祥事が多発している。検査不正が広がった三菱電機、エンジンの排ガスや燃費の性能を偽っていた日野自動車、システム障害を繰り返すみずほ銀行…。
不祥事の蔓延だけではない。様々な指標が日本の地盤沈下を物語っている。例えば、イノベーション。かつて日本は「イノベーション大国」だった。しかし、いま日本企業から世界を驚かせるような革新的な価値は生まれなくなった。労働生産性においても日本は低迷したままだ。2018年の日本の労働生産性は、経済協力開発機構(OECD)加盟国36カ国中21位に低迷している。
「活力枯渇病」という重病
どうして日本企業はこのような状態に陥ったのか。その理由は単純ではない。リーダーシップの不在、近視眼的短期志向、戦略の選択ミス、不十分な資源投入など、様々な要因が絡み合い、「失われた30年」の間に競争力を削いでいった。
そして、こうした無策、不作為、失策が積み重なり、いま多くの日本企業は重篤な病にかかっている。それは「活力枯渇病」という重病である。組織の活力が失われ、活気、やる気というものが消えてしまっている。わかりやすく言うと、社員がファイティングポーズをとらないのだ。どんなにリーダーが号令をかけようが、社員が「闘う姿勢」を示さなければ、実行はおぼつかない。
組織風土が大きく傷んでいる
ファイティングポーズをとらない会社は、問題解決ができない。問題と向き合おうとせず、意図的に隠そうとさえする。その最たる例が、大企業で相次ぐ不祥事だ。検査不正の連鎖などは、現場が目の前の問題と真正面から向き合わず、「ごまかそう」「逃げよう」とする姿勢があらわれたものだ。
しかし、こうした状態を「現場の問題」と矮小化して捉えてはいけない。活力枯渇病は組織全体の問題である。なぜ、現場は目の前の問題をごまかすのか。それは組織全体を覆う空気感や雰囲気、つまり組織風土に原因がある。
組織風土とは何か?
この「組織風土」という概念は、実に厄介である。何となくのニュアンスはわかるが、明確には定義しづらい。また、似たような概念として「組織文化」という言葉もある。
組織風土も組織文化も目に見えないものであり、明瞭な区分けや線引きは難しい。
組織風土とは仕事環境の特性
ハーバード大学のG・H・リットビンとR・A・ストリンガーは、組織風土を次のように定義した。
「仕事環境で生活し活動する人が直接的に、あるいは、間接的に知覚し、彼らのモーティベーションおよび行動に影響をおよぼすと考えられる一連の仕事環境の測定可能な特性」