2022年10月号掲載
認知症パンデミック
- 著者
- 出版社
- 発行日2022年7月10日
- 定価946円
- ページ数252ページ
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著者紹介
概要
コロナ禍での「ステイホーム」が、認知症パンデミックを引き起こしている ―― 。今、外出自粛などの「自発的ロックダウン」を行った高齢者が、認知症を発症するケースが増えている。コロナ禍で進む「つながり」の希薄化、コロナウイルスが認知機能に及ぼす影響…。脳を萎縮させる様々なリスクについて、認知症専門医が解説する。
要約
ポストコロナは認知症パンデミック
「認知症パンデミック」 ―― 。認知症はすでに世界で同時流行しており、各地で対応できる限度を超える恐れがある。
現代人は長寿になり、高齢化率(65歳以上が人口に占める割合)も高い。このような状況で起こったコロナ禍は、世界中で認知症を悪化させる要因を拡散させた。その影響は非常に大きい。
2025年に認知症患者700万人
我が国の高齢化率は2000年にイギリスやドイツを抜いて世界1位になった。平均寿命も男性が82歳で女性は87歳である。だから、世界一高齢化した日本で認知症が増加したのは当然といえる。
認知症患者の増加への危機感から、日本では患者数の将来予測が行われてきた。患者数は予測を超えて増加し、2012年時点で462万人に達した。
その後、厚労省は2025年には認知症患者が約700万人となり、65歳以上の高齢者の5人に1人に達するとの危機的な予測を発表した。
また、厚労省は「介護者不足」という問題も提起している。2025年に向けた介護人材にかかる需給推計によると、介護人材の需要見込みは253.0万人、一方、供給見込みは215.2万人で、差し引き37.8万人が不足するという。
ソーシャル・ディスタンスvs心のディスタンス
認知症対策の大原則は、「つながりの構築」だ。このつながりの多くが、コロナ禍で希薄になった。
2019年12月に始まったコロナ禍により、感染予防のために人間同士があまり近づかないようにすることが必要となり、「ソーシャル・ディスタンス」という言葉が使われるようになった。
このソーシャル・ディスタンスは孤独と不安を生み出す。それに対抗するには、安心感をもたらす心のつながりが必要だ。つまり「心のディスタンス」は広げないことである。
もちろん「3密(密閉・密接・密集)」は一緒にいる感覚を共有しやすく、親しくなることもできる。感染予防のために悪玉のような扱いを受けているが、実は脳にとって3密は大変よいことなのだ。知らない人に囲まれることでよい緊張感が生まれると同時に、相手に気を使うことで脳に新たなネットワークも構築される。
また、親しい関係が増えることでつながりも増え、それが安心感をもたらす。つまり高齢者や認知症患者、そして介護する家族にとって、つながり→安心感、孤立→不安感ということになる。