2022年11月号掲載
マッピング思考 人には見えていないことが見えてくる「メタ論理トレーニング」
Original Title :THE SCOUT MINDSET:Why Some People See Things Clearly and Others Don't (2021年刊 )
著者紹介
概要
「マッピング思考」とは、まるで地図を描くように物事を“俯瞰的に”捉えようとする考え方のこと。身につければ、自分の間違いに気づき、軌道修正ができる。また、曇りのない目で物事を判断できるなど、多くのメリットが得られる。そんな“全体を描くスキル”の特長、トレーニング法について、様々な事例を交え、解説する。
要約
マッピング思考とは?
「判断力が優れている人」とは、どういう人のことを指すのだろう?
ぱっと思い浮かぶのは、「知的である」「頭の回転がいい」「勇気がある」「忍耐力がある」などではないか。
もちろん、これらはどれも価値がある。だが、なかでも特に重要だが、見過ごされている資質がある。それは、「マッピング思考」 ―― すなわち「物事を“こうあってほしい”という視点ではなく、まるで地図を描くように“俯瞰的に”とらえようとする考え方」である。
例えば、それは次のような能力だ。
- ・自分の間違いに気づき、軌道修正ができる。
- ・「あの議論では私が間違っていなかったか?」「このリスクを取ることに価値はあるか?」といったことについて、率直に自問できる。
判断力を低下させるものは「知識」ではなく「態度」
物理学者の故リチャード・ファインマンは、こんな名言を残している。
「自分に嘘をつかないことは、何よりも重要だ。だが、自分ほどだましやすい人間はいない」
ベストセラー『予想どおりに不合理』などの書籍によって、人間の脳がいかに「自分をあざむく」ようにできているかが白日の下にさらされた。つまり、人は自分の欠点やミスを認めるのが恐ろしく下手だということだ。
こうした人間の心理的傾向は、基本的にその通り。確かに、私たちはミスをした時に都合よく言い訳をしようとする。しかし一方で、ミスを認める時があるのも事実だ。
人間は複雑な生き物だ。真実から目を背けることも多いが、正面から向き合うこともある。
この両面のうち、自分の内面に向き合って行動する時に何が起こるか、そして、それから何を学べるか ―― それが、本書のテーマだ。
「人の判断力を低下させているものは、知識ではなくむしろ態度である」。私も、自らの失敗や苦い経験を通じて、この大きな教訓を学んできた。