2023年6月号掲載
聖書がわかれば世界が見える
- 著者
- 出版社
- 発行日2022年10月15日
- 定価990円
- ページ数247ページ
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著者紹介
概要
世界三大宗教の1つ、キリスト教。世界人口の約3割を占めるとされる信徒の動向は、国際情勢に与える影響も大きい。世界を理解する上で、知っておきたいこの宗教について、池上彰氏がわかりやすく説く。世界宗教への発展の契機となった「宗教改革」、イスラム教徒らを虐殺した「十字軍」など、その光と闇の歴史が語られる。
要約
世界に広がるキリスト教
国際情勢を理解する上で、『聖書』の知識は必須である ―― 。
ローマ帝国で信者が増大
キリスト教が世界に広がるきっかけは、ローマ帝国の国教となったことである。
イエスが誕生する前の古代ローマは共和制をとっていた。しかし、紀元前27年に共和制から帝政に移行する。2世紀には「五賢帝」と呼ばれる賢い皇帝が5代続き安定した時代が続いた。その後、ローマ帝国は軍団を率いた軍人皇帝の時代を迎えると、内戦や政治的対立で混乱が続く。
この混乱の中で、人々の心を掴んだのがキリスト教だった。ユダヤ教から生まれたキリスト教は、ユダヤ人だけではなく、「異邦人」、つまりローマ帝国に暮らす人々にも布教をした。こうして各地に、キリスト教徒の共同体が形成されていく。
一方、混乱が続くローマ帝国内では格差が広がる。社会の底辺に位置する人々は、キリスト教に救いを求めた。信者たちは互いに助け合って暮らすようになる。だがそれは、キリスト教徒以外からは、まるで秘密結社のように見られてしまう。
その結果、キリスト教徒に対する迫害が始まる。
感染症がキリスト教を広めた
そんなキリスト教がローマ帝国内で広く普及するきっかけとなったのは、感染症だった。マルクス・アウレリウス・アントニヌスの治世に発生した流行で、1000万人近い人が死亡。この時、多くの人はキリスト教に救いを求めた。キリスト教徒は、悪疫の荒れ狂う最中でも病人の看護をしたからだ。それがキリスト教を強化することとなる。
皇帝コンスタンティヌス大帝は、313年、キリスト教の迫害を止めて、キリスト教を容認した。その後、キリスト教の信者になる皇帝も出るようになり、キリスト教は市民権を得る。
392年、テオドシウス帝はキリスト教を国教と定める。こうしてキリスト教迫害の時代は終わり、これ以降は、国の手厚い保護を受けるようになる。
広大な地を支配したローマ帝国の国教となったことで、キリスト教はヨーロッパ各地に広がり、「世界宗教」へと発展していくのである。