2023年6月号掲載
永遠平和のために
Original Title :ZUM EWIGEN FRIEDEN (1795年刊)
- 著者
- 出版社
- 発行日1985年1月16日
- 定価638円
- ページ数145ページ
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著者紹介
概要
ドイツの哲学者、カントが著した平和論の古典。戦争を将来にわたって防ぎ、地上に恒久の平和を築くための方途が説かれる。常備軍の全廃、諸国家の民主化、国際連合の創設…。平和の実現が空論ではない根拠を示し、平和への努力を促す。ロシアのウクライナ侵攻など、いまだ戦火の絶えない今日、改めて熟読したい書である。
要約
永遠平和のための予備条項
実務にたずさわる政治家は、理論的な政治学者とは仲が悪い。政治家は、政治学者を机上の空論家と蔑視し、政治学者が無内容な理念を説いても国家にはどんな危険ももたらすことはないであろうし、それを気にする必要はない、と考えている。
そうだとすれば、そうした政治家は、政治学者が世間に公表した意見の背後に、国家に対する危険をかぎとったりしてはならないであろう。
この考案の筆者は、悪意に満ちたあらゆる解釈から完全な形で保護されていることを願っている。
*
第1条項
将来の戦争の種をひそかに保留して締結された平和条約は、決して平和条約とみなされてはならない。
なぜなら、それは単なる休戦、敵対行為の延期で、平和ではないからだ。平和とは、一切の敵意が終わることである。平和条約を結ぶ当事者たちですら察知していないような、将来の戦争のための諸原因がまだ残っているとしても、これらの原因は平和条約の締結によって否定されたのである。
だが、国家政略に関する啓蒙家ふうの考えによると、国家の真の名誉は、どんな手段を用いるにせよ、権力の不断の増大にあるとされるから、この判定がいかにも杓子定規に見えるのは当然だろう。
第2条項